2008-01-01から1年間の記事一覧

「東京物語」

大晦日のテレビはどこも無理矢理のお祭り騒ぎで見たいものもないので、竹泉の濁り酒を飲みつつ「東京物語」を見る。何度見ても見飽きない味わい深い映画。映画史でも屈指の老人映画でもある。 子どもたちを訪ねて尾道から上京した老夫婦。滞在が長くなるうち…

厳冬

ここに来てにわかに山岳遭難のニュースが増え始めた。雪崩もあるが、滑落事故が多いのは天候の厳しさを思わせる。滑落のあったのは、中央アルプス檜尾岳、北アルプス槍ヶ岳・西穂高岳、東北の大朝日岳、いずれも低温・強風などの悪条件に足をすくわれたのだ…

ブックオフ

先日見た「まあだだよ」のせいで内田百閒が急に読みたくなり、久しぶりにブックオフに出かけた。品揃えの大部分はコミックだが、一部に文庫本と単行本の棚がある。五十音順できちんと整理されているのでうの棚を見たら、内田康夫しか並んでなくてげっそり。…

寒波

クリスマスに1日遅れたが、今年もやはりこの時期に寒波がやってきた。天気図は典型的な西高東低、ひまわり画像を見ると日本海から伸びる雪雲のカーテンが、列島の左半身全幅をその白い裾で撫でて凍りつかせている。ライブカメラで見る中国山地の脊梁越え道…

日生・牡蠣三昧

いつの間にか「安心実現のための経済対策」とやらで、土日祝の昼間の高速代が半額になっている。ただしETC通行で100キロ以内だが、山陽道なら備前まで足を伸ばすことができる。備前といえば、よく遊びに行く閑谷学校が近いが、海に向かえば日生(ひなせ)漁港…

「乱」

先日の「影武者」に続いて「乱」を見る。これは映画館では見ていないが、レンタルで見ていると思う。しかし何を見ておったのだろう。これはとんでもない映画ではないか。黒澤映画のどころか、日本映画の一つの頂点ではなかろうか。 見どころ、感じどころはた…

「影武者」

BSで「影武者」を見る。公開された時に見に行って以来だから28年ぶり。壮大な様式美に圧倒されたという印象が残っているが、今見ると特に前半は黒澤らしい濃やかな人間ドラマになっていて、いい意味で印象を裏切られた感じ。年をとって見えやすくなった部分…

Acer Aspire one

買っちまった。はやりのネットブック、Aspire oneの黒である。 普段使いのソフトをネットやSDカードからインストールすると、小さいながら一人前のWindowsノートである。処理速度にもあまり不満は感じないし、バックライトにLEDを使っているという液晶も明る…

『温泉案内』

温泉案内一巻。博文館昭和6年刊。編纂は鉄道省というから、後の運輸省あるいは国鉄のオフィシャルガイドといったところか。手許のものは昭和12年の第18版。版数を見ると当時のベストセラーだったことがうかがえる。 装幀がちょっといい。布表紙の表は鶴ある…

鈴鹿の笹

先日訪れた鈴鹿イブネの笹の衰え具合は驚くべきものだった。イブネといえば、御池岳奥ノ平とともに背丈を越えて視界をさえぎる笹の海のせいで、かつてはベテランしか踏み込むのを許されない特別な秘境というべき場所だった。西尾寿一の『鈴鹿の山と谷』には…

鈴鹿イブネ・タイジョウ

雪が来る前の冬枯れの樹林を歩いておこうと、半年ぶりに鈴鹿へ出かけた。 前夜、黒丸パーキングに車中泊して朝、旧永源寺町甲津畑の岩ヶ谷林道入口に入り、8時半歩き始める。千種街道には枯れ葉がたっぷり散り敷いている。今日はマイナールートを歩いてみよ…

初冬

冬らしからぬ日は淡い色合いの夕焼けで暮れた。遅い小春日和と呼ぶには日射しが足りないのに生ぬるい気温。この初冬はこんな日と早い寒波とが入れ代わりやってきて、日本海側のライブカメラも白くなったり黒くなったり忙しい。例年の如く、年末の大寒波を待…

万国旗通り

仕事先へ急いでいる途中、変な通りに迷い込んでしまった。 いまどき運動会でもあまりお目にかからない万国旗がずっと続く商店街。 なんだか懐かしい風景だ。 小さい頃、母親に手を引かれてボンネットバスに乗り、近在では唯一公設市場のある街に出かけたこと…

「デルス・ウザーラ」

昨夜BSでやっていた「デルス・ウザーラ」は想像以上にいい映画だった。作られた1975年当時、国内の評判は芳しくなく、あまりに坦々としたといった評が多かったように思う。けれど今見ると、黒澤が何の小細工もなく真っ正面から受けとめているシベリアの映…

加藤周一逝く

加藤周一、死去。朝から大きな喪失感にとらわれている。真っ暗な荒海を一筋照らしていた灯台の光が突然消えてしまったようだ。子どもの戦争ごっこめいた雑な世界観を振り回す自称リアリストが横行するなかで、時代の悲惨に真っ先に直面することになる個人の…

ネットブックと親指シフト

ネットブックと称される超小型で安価なノートパソコンは、今年いちばんのヒット商品ではなかろうか。台湾の聞いたこともないメーカー製が人気だともれ聞くうちに次々に類似のノートが発売されて、今では有名メーカーまで参戦している。今、日本で購入される…

アラフォー

標記の言葉を最近よく耳にするので、何のことだろうと思っていたら、流行語大賞とやらのニュースでようやく意味が分かった。「around 40」の略だそうな。しかし、なんて気持ちの悪い音感の言葉だろう。最近はやりのアクセント無しで言われるから、よけいに気…

月と惑星

とっぷり暮れた空を何気なく見たら、弦月とひときわ明るい星が二つ、西の空に並んでいる。記憶にない光景なので、あわててカメラと三脚を持ち出して撮影した。山の端にかかった月はみるみる沈んで、すぐに見えなくなってしまったから、きわどいタイミングで…

感冒

何年かぶりに風邪をひいた。喉の痛みから始まるおなじみの鼻風邪、いや症状からすれば喉風邪だ。インフルエンザと違い熱も全身症状もないので甘く考えていたら、後半は咳と痰がひどくてかなわない。山に登るようになって風邪をひくことが少なくなったが、た…

Dropbox

画期的なオンラインストレージサービスがあるというので試してみた。Dropboxがそれ。ダウンロードしてインストールすると、アカウントの作成画面が出るのでメールアドレスとパスワードを設定。するとマイドキュメントにMy Dropboxフォルダができている。ここ…

水村美苗『日本語が亡びるとき』

先日の朝日新聞書評でも取り上げられていた通り(何とも舌足らずな評だったけど)、実に刺激的な本。挑発的な本でもある。 重要な論点が幾つもあって、まだ頭のなかで整理できてないけれど、一応自分が大ざっぱに理解したところを組み立ててみると。 1)言…

小楢

家の裏に出て、屋根と裏山に挟まれた細長い青空を見上げると、コナラがいい具合に黄色くなっている。木末まで10mもあるだろうか。家の北側の裏庭と呼ぶには狭すぎるスペースは、山からせりだした大きな木々のちょうど真下で、春には芽鞘が降るし、夏には毛…

裏山にいます

長らく手入れをしていない裏山が荒れつつあるので、この冬は気が向いたら上がってみることにする。今日はその第一日ということにして、そのために新調しておいた鉈と竹切り鋸をベルトにつけて、長靴姿で突入。 第一の難物は竹。いらぬ所に勢力を広げているし…

細江英公展

物量系スーパー・コストコへの途次、尼崎の文化会館でやっている「細江英公の世界」展を見た。細江英公という写真家の仕事をコンパクトに概観できる好展示ではなかろうか。 「薔薇刑」1963年。ムキムキマンになった三島由紀夫がうれしげにホースに絡まったり…

LEDランタン

ちょっと面白いLEDランタン。 テント内の明かりはこれまで蝋燭ランタンが贔屓だったが、かさばる寝袋を着た冬は寝返りの度にひっくり返さないか、気をつかうことが多いので、長持ちで明るいLEDのランタンを探した。 まずは、ブラックダイヤモンド「オービッ…

きつぱりと冬が来た 八つ手の白い花も消え 公孫樹の木も箒になった きりきりともみ込むやうな冬が来た 人にいやがられる冬 草木に背かれ、蟲類に逃げられる冬が来た と、うたったのは高村光太郎だが、今日の午後からの寒気の急襲は、まさにそのようなきっぱ…

RSSリーダー

今頃かよと笑われそうだが、最近になってようやくRSSリーダーというものの便利さを知った。もちろんRSSという名はずいぶん以前から聞いていて、サイトの更新情報をいち早く届けてくれるものだということも知ってはいたのだが、なかなか導入する気にはなれな…

丹波立杭

予報より天気がよかったので、里山の紅葉を楽しみがてら、丹波立杭に出かけてみた。丹生山を越えて吉川から加東、立杭と走る道は、ちょうど雑木の黄葉の盛り。東条の道の駅に寄って野菜を買ったり、寂しい秋津台の別荘地の上の秋津富士に登って東条湖を眺め…

月光富士

久しぶりに玉姿を拝もうと三ツ峠ライブカメラをのぞいてみたら…、 おおー、夜目にも、いや夜カメラにも鮮やかな雪の山巓。 そういえば今宵は月齢15の全き満月。もし今晩カメラをかついで三ツ峠山に登っている人がいたら、長時間露光で月光に輝く神秘的な富士…

採蕈詩

峰を攀じて松根を探り、雲を眺め谷音を聞く――山水画の世界に遊ぶような松茸狩りは、江戸漢詩人の格好の題材だったに違いない。そこにはもとより自然があり、採集の楽しみがあり、香味があり、酒肴があるのだから、うたうことは多い。ほとんどの詩人が一度は…