初冬


 冬らしからぬ日は淡い色合いの夕焼けで暮れた。遅い小春日和と呼ぶには日射しが足りないのに生ぬるい気温。この初冬はこんな日と早い寒波とが入れ代わりやってきて、日本海側のライブカメラも白くなったり黒くなったり忙しい。例年の如く、年末の大寒波を待たなければ低緯度地方は厳冬とはならないんだろうな。
 温暖化のせいで、身が引き締まるような初冬の景物はもう詩のなかでしか味わえない、という日も遠くないかもしれない。
 ○冬暁澱江舟中
 兩岸 煙無く 旭日紅なり 
 寒光凛凛たり 暁晴の中
 黄蘆 戟立して 葉皆偃(ふ)す 
 知る是れ霜威の嚴 風に似るを
 「竹外二十八字詩」巻之ニから。伏見・大坂を結ぶ三十石船から眺めた明け方の淀川の景。淀川の上り下りの眺めは多くの詩人に詠まれているが、藤井竹外は川沿いの高槻の人だけに、特に澱河周辺の詩が多い。
 今では寒々しく感じられるばかりの冬の川だが、川が交通や漁労の場として生活と密着していた当時は、冬にも数々の詩材が見出され名歌句詩を生んできた。さしずめ芭蕉の名句
 霰せば網代の氷魚を煮て出さん
はその代表格だろう。さすがに、ここまで季節のイメージの組み立てが斬新でありながら身近な生活感も感じさせる詩は漢詩には見つからない。