金沢21世紀美術館

正月旅行で訪れた標記の美術館の見学記。一般の美術館とはまったく印象を異にする面白い体験ができたので。 第一の見どころは建物そのもの。直径100メートルほどの偏平円筒形のガラス外壁のシェルに、上の見取り図のように十幾つの大小の箱がささったような…

鉄斎美術館

久しぶりに清荒神もうで。国道176号から山側に上る道は、いつも休日は参拝の車で渋滞していたものだが、駐車場が拡張されてかなり解消されている。すんなり山に上って、とりどりの出店が楽しい参道を抜けて、人の多い境内に入る。しばらく見ない間に史料館な…

ウィーン世紀末展

天保山のサントリーミュージアムで開催されている標記の展覧会を見てきた。安治川河口にあるサントリーミュージアムに向う前に、その上流の北浜に碇を降ろし、以前から行ってみたかった東洋陶磁美術館を訪ねる。 中之島のほとんど最上流、大川沿いの静かな美…

市美

タダ券を頂戴していたので最終日に大阪市立美術館の道教展に出かけた。馬の耳に念仏。どうも神秘系・秘儀系は苦手なので、さらっと一巡して終わる。大変力の入った催しだったことは分かった。熱心に見ている人が多いことにも感心。道教は日本ではごく傍流の…

「近世大坂文人画の世界」展

芦屋市立美術博物館で開催中の標記の展覧会を見た。 江戸後期には、全国各地に漢詩人がいて詩盟が盛んだったのと同様に、書とともに文人のもう一つの重要な嗜みである画をよくする人も多かった。田能村竹田は『山中人饒舌』で「又漢画と称する者あり。亦数派…

細江英公展

物量系スーパー・コストコへの途次、尼崎の文化会館でやっている「細江英公の世界」展を見た。細江英公という写真家の仕事をコンパクトに概観できる好展示ではなかろうか。 「薔薇刑」1963年。ムキムキマンになった三島由紀夫がうれしげにホースに絡まったり…

大琳派展ほか

ちょっとひとっ走りというには遠すぎるが、上野公園の3館に注目の美術展が集中した折から、思い切って東下りしてみることにした。日帰りも十分可能だが、一泊して翌日は江戸見物を楽しむことにする。 N700系の窮屈で座り心地の悪いシートに3時間耐えて着い…

ハンマースホイ展カタログ

国立西洋美術館で開催中の「ヴィルヘルム・ハンマースホイ展」のカタログを入手。未知の画家なのだが、展覧会の案内サイトをのぞいているうちに興味をもち、通販を申し込んだ。というのも、東京のみで関西には巡回しないから。この秋は国立博物館の「大琳派…

佐伯祐三と鐵齋・加藤周一

昨日の佐伯祐三と鐵齋の対比はほとんど加藤周一の受け売りだったりする。というか、佐伯祐三の絵の本場に匹敵する質の高さを目の当たりにしながら、明治以降の日本の芸術的創造力の動向に対する加藤周一の卓抜・明快な見取り図を思い浮かべることで、その天…

佐伯祐三展

かたじけなくもタダ券をめぐまれて、大阪市立美術館の「佐伯祐三展」を見てきた。いつぞやの蕪村展以来、久しぶりにうろつく天王寺。高校の頃、よく旭屋書店にかよった阿倍野筋沿いの商店街では、広大な更地が出現して再開発が進行中。公園内の通路からは喧…

コロー展

天気が急速に回復した午後、山を下りて神戸市立博物館のコロー展に出かける。コローといえば、個人的には「モルトフォンテーヌの思い出」。美術の教材か何かで見て、その抒情性に引かれたのが、絵というものが面白くなる最初だった。当時集英社からヴァンタ…

富岡鐵齋旧居

引き続きストリートビュー遊び。 以前から見に行ってみたかった鐵齋翁の居宅跡を、ずぼらにもマウス操作だけで訪ねてみた。といっても旧居は公開されているわけではないので、実地でもこのビューと同じく道からのぞくしかないのである。 大きな地図で見る 場…

ライバル美術史

東京国立博物館で今日から「対決−巨匠たちの日本美術」 と銘打った特別展が開催されている。タイトルに引かれてサイトをのぞいてみると、同時代の作家12組をマッチングした美術展らしい。日本美術史の至高と究極の対決みたいなもの。組み合わせは、 運慶 vs …

柳下絵古今集和歌色紙

先日の「ガレとジャポニスム展」には、ガレにまじってサントリーミュージアム所蔵の日本の名品もさりげなく展示されていて、二倍おいしかった。乾山の茶碗もよかったが、この宗達の色紙は小品ながらみごとなもので、めっけもんといえる遭遇だった。帰りに売…

ガレ展

天保山のサントリーミュージアムで「ガレとジャポニスム展」を見てきた。この美術館は初めて。ある種の巻き貝をイメージさせる、逆円錐型の建物の外観は、全面のガラスにすぐ横の海を写して面白いが、通路が入り組み、入口はどこやら展示室はどこらや、動線…

モディリアーニ展

姫路へひとっ走りして、市立美術館で開催中の「アメデオ・モディリアーニ展」を見てきた。どういうわけだか、同時期にもうひとつモディリアーニ展が、東京・大阪の国立美術館で華々しく開催されているので、作品数で劣るこちらは肩身が狭そうだが、量よりも…

浜辺の若者たち

某氏曰く、兵庫県立美術館のムンク展がよかったと。ほとんど興味はなかったのだが、一応サイトをのぞいてみると、出品作品の画像がなかなかいいではないか。例の「叫び」と「マドンナ」のイメージしかなかったのでノーマークだったのだが、こんな絵も描いて…

乾山展

京都文化博物館で開かれている「乾山の芸術と光琳」展を見てきた。出光美術館・MOA美術館と開かれてきた巡回展のトリ。錦小路の駐車場にとめて、のんびり高倉通を北上すると煉瓦作りの建物が現われるのでこれかと思いきや、これは辰野金吾設計の旧日本銀行京…

逸翁美術館

摂津池田の逸翁美術館に「蕪村・呉春展」を見に行った。蕪村では謝寅時代の日本的な南画「青緑山村居図」と「万竹林書屋図」の2幅、弟子の呉春では「山中採薬図」という大胆かつ稠密に線を重ねた絵が面白かった。呉春はその後、円山応挙に接近して、南画か…

鉄斎美術館

久しぶりに清荒神に立ち寄る。鐵齋詣でも、最近、マンネリ気味。鉄斎美術館の蔵品を全部見尽くしたというわけはないはずだが、展示される作品が限られているのか、このところ新しい出会いはほとんどなくなったように思う。もちろん何度見ても傑作は傑作なの…

川瀬巴水展

以前にカタログを請求したせいか、渡邉木版美術からタダ券が送られてきたので、用事ついでに守口の京阪百貨店で川瀬巴水展を見てきた。やっぱり心地いい風景版画。渋くて微妙な色合いが洗練されているし、彫りと刷りも細かくて端正。一枚どこかに懸けておき…

鉄斎美術館

清荒神に立ち寄る。このところ宝塚辺りにたびたび通っていたのだが、いつも開館時間に間に合わず、ようやく鐵翁への拝謁がかなう。今回は絵ではなく書の展示。書は分らないので、ざっと見るだけ。勤皇派弾圧から一時身を隠すことを知らせた蓮月尼への手紙と…

水西荘と鐵齋、メモ

「御幸町の家は餘り狭い。殊に夫人は身重になった。丁度其頃頼山陽の舊居三本木の水西荘、即ち山紫水明處が空家になったので由縁ある家であり翁は喜んで此處へ移った。此家の東側は加茂川で其の對岸に梁川星巖の宅があり、紅蘭女史が一寸野菜買ひに行くにも…

辰馬考古資料館

香櫨園の辰馬考古資料館に立ち寄る。毎春恒例の鉄斎展をやっている。灘の酒「白鷹」を造る辰馬家が設立した博物館で、鐵齋と親しかった初代が所蔵した鐵齋画がやはり目玉。蔵品に扇面や人物画などの小品が多いのは、その濃やかな交友を物語るものか。けれど…

川瀬巴水展カタログ

以前から探していた川瀬巴水展の図録をようやく入手。1990年に山梨県立美術館が開催したもの。図録としては高めの値段がついていたのだが、届いてみると意外にボリュームがない。カラー200図とあったので、それなりに大部のものと考えていたら、1ページに4…

井上安治

→大画像 インターネットから集めたわが名画コレクション(^^;)の一つ、井上安治(1864〜1889)の「枕橋の図」。14歳で当時人気の高かった風景錦絵師小林清親に弟子入りし、25歳で亡くなった夭折の風景版画家。「明治十四年御届」と記されたこの絵は、17歳の時…

鉄斎美術館

ついでがあって、春以来ひさびさに清荒神の鉄斎美術館に立ち寄る。秋の名作展を開催中で、いい絵がいくつも展示されていた。最晩年の水墨画の傑作「水墨清趣図」にも再会。このところ岡山で見た玉堂の一途な絵の印象にとらわれていただけに、鐵齋の画技・題…

玉堂断片2

→拡大 「深林絶壁図」は、11/2に触れた「山雨染衣図」とは対照的な絵だ。ここには心地よさなどかけらもない。岡山展でこの絵の前に立ったとき、“グロテスク”という言葉が思わず頭に浮かんだ。画面中央あたりの樹木の描かれ方がただごとではない。重なりあっ…

玉堂断片

玉堂の絵には人をうっとりさせる部分がほとんどない。たとえば、峰は靉靆たる霞の上にわずかに姿を見せ、麓の村落や林も眠るように霞のなかに見え隠れする。そんな我々の記憶に染みついている心落ち着く山水が描かれることはほとんどない。ただし、わずかな…

玉堂切り抜き

「古人の書画、飲興を借りて作る者あり。紀玉堂また然り。けだし酔中に天趣ありて人為に異なるなり。紀、酣飮始めて適し、落墨娓々休まず。やや醒むれば則ちとどむ。一幅、或いは十余酔を経てはじめて成る。その合作に至っては、人をして神往き、これを掬し…