細江英公展

 物量系スーパー・コストコへの途次、尼崎の文化会館でやっている「細江英公の世界」展を見た。細江英公という写真家の仕事をコンパクトに概観できる好展示ではなかろうか。
 「薔薇刑」1963年。ムキムキマンになった三島由紀夫がうれしげにホースに絡まったり、縛られたりしている。今ではステレオタイプともなったゲイ的表現だが、ここが源流だったことを知る。当時は物凄くセンセーショナルだったんだろうな。
 「抱擁」1971年。男女の裸体(その絡み)をコントラストの強い白黒で、ほとんど抽象的なオブジェのように表現している。これも今では驚くような手法ではないが、当時は……。女性の身体の曲線に我々はほとんどリリシズムを感じてしまうけれど、男のゴツゴツに女性は何を感じるのか。いっしょに行った嫁さんに聞きたかったけれどやめた。
 後半は土方巽大野一雄といった舞踏家とのコラボ作品も多い。大野一雄など、死の床にいるように老いさらばえて横たわる大野に、弟子が寄り添ったり、孫の赤子が乗っかったり、舞踏家の末期と思える写真があってなかなか感動的だったが、あらら、大野一雄ってまだ生きてるのね。暗黒舞踏は若い頃、日本維新派の公演に何度か連れて行かれたことがあって、自分の好みとは正反対の世界だけど、何となく懐かしい思いがする。
 最近仕事で出かけた大学でたまたまアンリ・カルティエブレッソン展を見て、図録を買い帰って、大変好きになったのだが、国・土地・時代・歴史が凝縮された町と人の瞬間をとらえたブレッソンの写真に対して、徹底的に作り込んだ細江英公の写真は、同じ白黒でも対極にあるといえそう。自分は圧倒的にブレッソンに引かれるなあ。ということで、ちょっと細江展の瞬間。