万国旗通り


 仕事先へ急いでいる途中、変な通りに迷い込んでしまった。
 いまどき運動会でもあまりお目にかからない万国旗がずっと続く商店街。
 なんだか懐かしい風景だ。
 小さい頃、母親に手を引かれてボンネットバスに乗り、近在では唯一公設市場のある街に出かけたことを思い出した。そこにも万国旗が飾られていたかどうかは定かでないけれど。
 あの頃はどこの通りも買物籠をさげて歩くかみさん方と、青鼻垂らして遊ぶ子どもたちで賑わっていた。
 今は昼前だというのにこの有り様。
 曇り空にはためく千の旗が、つかのま、逝きて帰らぬ時代を思い起こさせた。
 日本はほんとうに昔よりいい国になったといえるのだろうか。