厳冬


 ここに来てにわかに山岳遭難のニュースが増え始めた。雪崩もあるが、滑落事故が多いのは天候の厳しさを思わせる。滑落のあったのは、中央アルプス檜尾岳、北アルプス槍ヶ岳西穂高岳、東北の大朝日岳、いずれも低温・強風などの悪条件に足をすくわれたのだろう。最近は高山といえども昔のようなエキスパートの世界ではなく、一般登山者に毛が生えた程度の人でもグループ登山でやってくるらしいから、一たび天候が急変するとあちこちで簡単に遭難が起こる。
 現場に近い槍ヶ岳ライブカメラを見てみると、意外に明るい風景で、しかも長くこのライブカメラを見てきて厳冬期では初めて人の姿が写っているのに驚いた。今日は大荒れの天気も一段落のようだ。ライブ映像とともに公開されている気象データを見ると、25日と26日で一気に10度も気温が下がって、26日の最低気温は−24.4度。槍ヶ岳では最高レベルの厳冬に突入している。−20度なんて環境は経験したことないが、あらゆる斜面は硬く凍りつき、一歩足を滑らせたらそのまま奈落の底へというヒリヒリするような危険な世界だろう。まして、そこに暴風雪が加われば無理な行動は死に直結する。
 予報によると、元日前後にはふたたび寒波がやってくるらしい。年越し登山で山に入る人は多いが、状況を見て勇気ある撤退をお願いしたいものだ。我々は寒波のおこぼれで雪化粧した関西の山で、まったりスノーハイクを楽しむことにします。