ネットブックと親指シフト

 ネットブックと称される超小型で安価なノートパソコンは、今年いちばんのヒット商品ではなかろうか。台湾の聞いたこともないメーカー製が人気だともれ聞くうちに次々に類似のノートが発売されて、今では有名メーカーまで参戦している。今、日本で購入されるノートパソコンの4分の1がネットブックなのだそうだ。
 買い手の多くは、すでにパソコンを所有していて、2台目3台目として購入する人らしいが、確かにあの安さと小ささならちょっと持っていたい気がするなあ。公衆無線LANのあるカフェでおしゃれにネットサーフィン(もはや死語か)とまではいかなくても、食卓で寝床でトイレで(笑)と、ネット依存症患者には夢のようなネット浸り生活が想像できる。まあ、それがどれだけ生産的かといえば、ほとんどは遊びであり、要するにおもちゃなんだが。
 ところでネットブック生活に憧れても本気で購入を考えるまでに至らなかったのは、個人的に大きな障壁があるからだ。それは自分が親指シフターだということ。親指シフトの快適さに慣れてしまった身には、ただでさえ小さいネットブックのキーボードでローマ字入力なんて、鼻から考えられないというわけだ。かといって、親指シフトキーボードのネットブックなんて夢のまた夢。万万が一、富士通さんが作ることがあったとしても、きっともはやネットブックとはいえない値段をつけてくることだろう。
 では、親指シフターはこのデフレ時代の象徴、ネットブックの恩恵に浴することはできないのか、といえばそうでもない。実は世には親指シフトエミュレータと呼ばれるソフトがあって、ソフト的なカスタマイズで一般のJISキーボードでも親指シフト入力を敢行できるようになるのだ。ただし、前提条件としてキーボードのキー配置がそれに適したものでなければならない。
 少々親指シフトプロパーの話になるが、JISキーボードを親指シフトで使うには、親指シフトキーボードでは最下段のほぼ中央に位置する親指左と親指右という特有のキーをどれに割り当てるかが問題になる。普通、無変換キーと空白キーあるいは空白キーと変換キーに親指左と右を割り当てるのだが、それが簡単ではない。ノートパソコンのキーボードは、配列はJIS準拠でも配置には結構違いがあって、親指シフト化に適したものは多くないのだ。
 では、人気のネットブック親指シフトに適したキー配置の機種は存在するのだろうか。俄然興味が湧いてきたので、親指化の適否を判断する資料として、暇に任せてネットブック11機種のキーボード画像のリンク集を作ってみた。画像直リンク禁止をうたうPC Watchさんへのリンクだが、リンクの制限は画像であれなんであれインターネットの精神に反するという考え方もあるし、著作権法的にもこれは引用行為ということで、お許しいただくことにする。
マウスコンピューターLB-G1000
HP 「mini100
オンキヨーSOTEC C1
EndeavorNa01 mini
NECLaVie Light
デル「Inspiron mini 9
ASUSTeKEee PC S101
MSiWind Netbook U100 Extra
東芝NB100
日本エイサーAspire one
レノボIdeaPad S10e
 ネットブックといってもキー配置にずいぶん違いがあるものだ。さて、具体的にどれが親指シフトに最適かというと、このページにも詳しく説明されている通り、「Vキー左端から、Bキー右端までの間のどこかで、無変換キーとスペースキー(またはスペースキーと変換キー)の間が区切られている」ものというのが一般的な基準のようだ。それでいくと、オンキヨーEndeavorASUSTeKMSi東芝が候補に残るということになる。
 けれど、実際に自分の親指ノートでの指の位置を確かめてみると、少し違う基準も見えてくるように思う。親指シフトホームポジションに指を置くことから始まるが、両人指し指をホームポジションJとFに置いたときに、両親指が自然にどの位置にくるかが大切なのじゃなかろうか。自分の場合は、Jのほぼ2段真下に右親指が、Fの2段下少し右寄りに左親指がくるのが自然なようだ。いつの間にかそういう微妙に左右非対称なポジションが定着しているようだ。だから、この両親指のホーム位置にちょうど親指右・左キーになるキーがくる配置こそが自分に適したもの、ということになるのではないだろうか。
 この基準でいくと、上の候補5機種は必ずしも自分のホームポジションに適した配置とはいえないことが分かってくる。今のポジションを少しずらさないと、キーとキーとの境に指がかかってしまったりするのだ。逆に、候補から外れた機種にホームポジションにかなり合致するものがある。それがNEC日本エイサーのもの。親指右キーになる変換キーはJキーのほぼ真下にあるし、親指左キーは長めの空白キーを利用できる。変換キーの小ささが少し不安だが、他機種のようにそれがJの真下から少し右にあるよりはまだ自然に指が置けるだろう。また他機種は空白キーが短めで、Fキーの真下からかなり右寄りに親指を置かなくちゃならないのも苦しい。
 だから、個人的にはNEC日本エイサーのどちらかを買えば、ネットブック親指シフト化はかなり完成度の高いものになるんじゃないかというのが、この小研究の結論だ。NECのものは最近発売されたものだけど、キーボードはエイサーとそっくりだし、液晶サイズも同じで、たぶんエイサーのOEM品。だとすれば、値段も安いエイサーのAspire oneこそが私的親指シフト最適ネットブックということになりそうだ。
 と、ここまでくると、実地に親指化を試してみたくなるから藪蛇だったなあ。