きつぱりと冬が来た
 八つ手の白い花も消え
 公孫樹の木も箒になった

 きりきりともみ込むやうな冬が来た
 人にいやがられる冬
 草木に背かれ、蟲類に逃げられる冬が来た
 と、うたったのは高村光太郎だが、今日の午後からの寒気の急襲は、まさにそのようなきっぱりした冬の到来を感じさせる。
 つい先日まで、タイミングが合えば出かけようと紅葉の具合をチェックしていた奥大山紅葉情報には、なんと「積雪により通行止め」のアラートが出た。名残の紅葉もこれで一気に凋落して、多くの山はすっきりと冬支度の様相だろう。
 木々はことごとくを葉を落として尾根は明るくなり、どこを歩いても枝の編み目を透かして峰が見晴るかせるようになる。空と地が近くなるから、曇りの日はうそ寒く、歩いていても鬱々として楽しめない。晴れ渡った日はその逆で、乾いた落ち葉を蹴散らしてどこまでも歩いていきたくなる。
 雪がくるまでのしばらくの猶予期間、空白の初冬には、山と人もより近しくなるような気がする。夜、焚き火などして空林に宿れば、木々の囁きは夢に入って、きっと透明な眠りが得られるに違いない。