鈴鹿 藤原岳・御池岳一泊周回

 土日はK氏を誘って、去年日帰りで歩いて良かった藤原岳・御池岳の周回コースにテントを担いで出かけた。
 歩き始めが正午と遅くなったのと、前日までの雨で茶屋川の水量が多かったため、茨川から藤原岳の西尾根に取りつくまでに時間がかかる。左岸斜面の荒れた道を歩いたり、川原に降りたり、右往左往しながら進む。ついには流れにはばまれて徒渉しようと靴を脱いだら、靴下が真っ赤。やられた〜。よく知られたノタノ坂の登りで十分に気をつけていたのだが。わがB型Rh+を貢ぎ奉った山蛭大明神はすでに姿なく、鮮血が流れ止まない小さな吸口が残るばかり。噛みつく際、蚊ほどにも刺激を与えない何というたくみな吸血鬼! 靴下を洗い、ティッシュとバンドエイドでどうにか流血をふさいで出発。
 きつい西尾根を重荷と暑さにへろへろになって登り、山上の山荘にたどり着いた頃には、陽は傾き人影はどこにもない。水さえ十分にあればここに泊まってもいい所だが、キャンプ地の豊富な水を当てにして、小さい水筒しか持ってない。幸い日の長い時節。疲れと喉の渇きをなだめつつ白船峠に至り、夕暮れ迫るトラバース道を真ノ谷キャンプ地に6時過ぎ着。
 山は常に想定以上にきつい、という山屋の法則を再確認した半日だった。同時に、山は常に想像以上に美しい、という法則も。茶屋川の新緑、西尾根の咲き残りのカタクリ、白船峠からの下りの暮れなずむブナ林、そして焚き火を起こして酒を酌むキャンプ地の静かな夜…。
 翌日も、前日後半こむら返りで苦しんだK氏には気の毒だったが、いきなりの急登からスタート。キャンプ地の背後の斜面を御池岳の1241mピークに向けて登る。白いカレンフェルトの間をバイケイソウが埋めるようになると急登の終わりも近い。広大な御池岳山上台地は笹のジャングルだった以前と違い、風と光にあふれた草原に変貌している。わずかに残る衰えた笹がイブネのように消えるのも時間の問題だろう。
 台地を横断して急崖の上の展望地ボタンブチで休んだ後、台地の縁をたどってT字尾根への下降点を探す。立ち木にすがりながらの急下降をこなすと、見どころ豊富な尾根歩きの始まり。ブナ権現は大ブナの白い幹と新緑が爽快なステージ、続いて尾根が痩せると満開のシャクナゲが目を喜ばせる。足元にはイワカガミのピンクが踏み跡を飾る。T字の交点を左に折れると右斜面は植林地で、もう消化試合かと思いきや、広い尾根をおおうブナの純林が現れ、尾根歩きはとびきり美しい終章を迎える。ええとこでしょう、Kさん。っと、またこむら返り?!
 T字尾根から林道ヘの下降には去年に続いて苦労した。以前は楽にたどれた記憶のある若い植林地のなかの道にこだわったからだが、結論としてそんな道は木が伸び、斜面が崩れてもう消えている。今はGPSトレースに青で記したルートが正解だったよう。記憶に固執するのは年取った証拠? 軽いツェルトと中ザックでズルをした自分に比べ、正々堂々大ザックで臨んだK氏には最後まで気の毒な仕儀であった。
藤原岳・御池岳周回GPSトレース
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▼茶屋川の新緑
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▼芒洋たる藤原岳山上を縦断
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▼夕暮れ迫る真ノ谷への道
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▼御池岳山上平原を行く
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▼ブナ権現の平
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▼T字尾根のシャクナゲとボタンブチ
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▼イワカガミの咲く道
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▼T字尾根左翼のブナの美林で
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