ナイロビの蜂

 ほとんどどこにも出かけなかった黄金週間の暇つぶしに借りてきたDVDの一枚。「ヴィレッジ」が面白かったナイト・シャマランの新作「ハプニング」が本命だったが、これは期待外れ。植物が毒素を出して人間を自殺に追い込む、ってのがそもそもピンとこない。「ヴィレッジ」の森の描き方といい、西洋人の心に潜む古来からの森への恐れに訴えるねらいなのだろうが、農耕民のアジア人には空振り。前作の桃源郷の仕掛けは面白かったけどね。
 「ナイロビの蜂」はフェルナンド・メイレレスという初めて聞くブラジル人監督のメガホン。アフリカで人道援助を隠れ蓑にひそかに新薬の治験をやっている巨大製薬会社の所業を、謀殺された妻に代わって旦那が暴くという、筋書き的にはよくある国際陰謀物だが、それをこの監督は一種前衛的なカメラワークで強烈な映像作品に仕立てている。色が普通ではないし、カメラもよく動く。それが不条理渦巻くアフリカの現実によく合っているといえばいえるが、どうしてもぬぐいきれない内容の通俗性との乖離も感じなくはない。かといって、国際陰謀物としては筋の運びがもたもたして、あまり成功しているとはいえない。第一、主人公が二人とも死んじゃっては、娯楽映画の範疇を外れてるわなあ。
 あれやこれやイチャモンの付け所は多そうだが、それも有り余る能力と意欲ゆえの破綻といえなくもない。まあ、最近出色の監督であることは間違いなさそう。出世作の「シティ・オブ・ゴッド」、最近作の「ブラインドネス」も見てみなくちゃ。とにかく疲れる映像なので、元気なときしか見る気がしないけどね。