乗鞍岳

 引き続く快晴の土曜は乗鞍岳へ。氷ノ山一辺倒の箱入り山スキーから、エイヤっと中部山岳の高山にハードルを上げてみる。休日割引の後押しもある。イチかバチかの賭に出たわけだが、結果は凶と出た。登りはヘロヘロ、下りはボロボロ。ほとんど通用せんのである。
 スキー場は終わり、道路はまだ閉じていて、ゲレンデボトムから幾つかの急斜面に消耗しつつひたすら歩かなければならなかったため、まず体力的にきつかった(久しぶりに踵の皮が剥けた)。それもあって肩の小屋から登りかけた最高峰の剣ヶ峰は、シュカブラと堅雪に自分の技術ではとてもまともに滑れまいと断念。ただ辺りを散歩して帰った。この日登った少なからぬスキーヤー・ボーダーは、みんな剣ヶ峰か富士見岳の山頂を極め、飛ぶが如く東斜面を滑降したようだが、不甲斐ないことであった。せめてスキーをデポして山頂を極めておくべきだった。
 肝心の滑りはなおひどかった。なだらかな位ヶ原はまだいいとして、その先に幾つも現われるシュプールで荒れた急斜面はとても乗りこなせず、微かにあった自信は完全に崩壊した。根本的に滑り方がダメである。腰の引けた今の滑りではなめらかな斜面ではなんとかターンというよりも制動しつつ下れても、荒れた斜面では体重の乗ったターンができないため翻弄され乱れる一方。ついには撃沈である。これではどんな条件でも安定して滑れるという山スキーヤーの資格をまったく満たしていない。已んぬる哉。
 それはそれとして、初めて入った中部の高山、雪の乗鞍のスケールは圧倒的だった。最高の天気だったこともあって、位ヶ原はまるで天上の風景。こんな風景を一日眺め暮らすことができたら、それはスキーの快楽よりも何よりも最高の喜びだろう。一度、天気のいい日を選んでここにベースを張ってみたいものだが、この光の氾濫に人間の目も皮膚も防御なしでは耐え得ないだろうから、それは神をも恐れぬ行為ということになるのかもしれない。そういえば見上げる一峰には高天ヶ原という名前がついていたな。
乗鞍高原スキー場から肩の小屋GPSトレース
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▼ゲレンデの向こうに聳える乗鞍
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▼ツアーコースを進む
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▼振り返れば中ア・南アのパノラマ
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▼ひたすら広い位ヶ原
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▼位ヶ原から望む穂高連峰
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▼最高峰剣ヶ峰の大観
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▼肩の小屋が近づいてきた
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▼剣ヶ峰の東斜面に取りつく人影
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▼肩の小屋と摩利支天岳のコロナ観測所
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▼肩の小屋から剣ヶ峰への登り
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▼風紋の斜面
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