御嶽山

 土曜日はこの夏最初の夏山登山。去年初めて登って面白かった木曽御嶽に、今度は長野県側から登った。前夜、標高1820mの中の湯駐車場まで入って車中泊。この黒沢口コースは最も古くから開かれた登拝道だけに、今は車道になっている部分にもたくさん石碑や石仏などの宗教的記念物が立ち並んでいる。
 7時過ぎ、休業中の中の湯の横を通って出発。道は針葉樹林のなかの急な登りだが、古びた角材がずっと密に敷かれていてさすがによく整備されている。ただ、それだけに足元は細かい凹凸が多くて、必ずしも歩きやすいとはいえない。中の湯が6合目で、7合目の行場山荘からはロープウェイで上ってきた人が合流し、急に登山者が多くなる。白山と同じく、老若男女、登山者の顔ぶれは幅広い。8合目の女人堂までくると、一気に山頂の眺めが開ける。ここから見ると山頂部はけわしい岩峰で、その斜面に小屋がしがみついている。
 女人堂までは順調だったが、その先の岩勝ちな斜面の急登でバテがきてペースダウン。石室山荘を抜け、二ノ池への道を分けて、最後のざれた斜面の登りは立ち止まることが多くなる。甘く見たなあ、黒沢口コース。去年の濁河コースより楽に登れるかと思ったのだが、終始登り続きで、平坦だったり下っていたり、歩きながら休める区間がぜんぜんない。帰って、GPSログの標高グラフを見ると、標高差1200mのほぼ一直線の登り。日頃冷房でだらけた体にはきつかった。
 10時半、最高峰剣ヶ峰。人が多いので写真だけ撮って辞し、予定通り池巡りに向かう。赤茶けた山肌に玉をはめこんだような二ノ池畔を通って、賽の河原へ下り、少し登って右に三ノ池を見下ろすトラバース道に入る。この道は緑が濃く、御嶽では初見のハクサンイチゲの群落もある。小さな五ノ池の畔の小屋に寄って缶ビールを買い、そのまま三・四の池の間のリッジをたどって、四ノ池火口へ下る。御嶽で一番大きな四ノ池火口の底は湿原になっていて、中は立入禁止だが、水が集まって流れ出る東の切れ口を登山道が通っている。本日の一番のめあてはここ。
 流れのそばに腰をおろして、火口原を眺めつつ缶ビールと朴葉ずしの昼食。辺りに咲く花はミヤマダイコンソウ・モミジカラマツ・ヨツバシオガマ、そして既に種になったチングルマ、葉っぱだけのコバイケイソウと、種類は多くないが、剣ヶ峰周辺の荒涼とした若い火山地形を見てきた目には瑞々しく映る。御嶽は北と南でずいぶん雰囲気の違う山だ。そしてやっぱり緑濃い北側にひかれる。
 リッジに登り返し、大きくて深そうな火口湖を見下ろしながら三ノ池火口の東縁を歩く。火口の南端には避難小屋があり、社のある水際にはたくさんの人が遊んでいる。小屋手前のざれた火山礫斜面にはコマクサの小さな群落。そのまま三ノ池を離れて女人堂へのトラバース道に入り下山の途に。少し行った最初の沢で子連れの雷鳥に遭遇。御嶽に雷鳥がいるとは思わなかった。親鳥がやさしい声で離れて遊ぶ数羽の雛を呼んでいる。トラバース道は梯子場と二度の雪渓横断があり、登山の雰囲気の濃いコース。けれどここも行者道として開かれたものらしい。
 女人堂からは一気の下り。下る人、登ってくる人、途中で泊まれる小屋が幾つもあるだけに、遅くなっても人の行き来は多い。「六根清浄」の声も今日初めて聞いた。御嶽山は道も多いし、登ってくる人もさまざま、火山が生んだ自然の表情も多様で、白山と同じく自然と文化が溶けあった懐の深い山だ。火山地形が若いせいで植物が薄い剣ヶ峰周辺は、特に人の活動の印象が濃い。その宗教臭を嫌う人も多く、自分も以前は食わず嫌いの部類だったのだが、登ってみたらそんなに簡単に片づけられる山ではない。御嶽の全容を知るには数年通う必要がありそうだ。また来夏もコースを変えて登ってみたい。中の湯駐車場帰着、3時半。
▼女人堂からは山頂が一望
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▼白装束の登拝者と二ノ池
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▼四ノ池火口から流れだす沢
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▼満々と水を湛えた三ノ池
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▼御嶽のライチョウ
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▼雪渓の残る三ノ池〜女人堂トラバース道
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