山の本


 「山の本」という小さな雑誌がある。装幀だけ見ると椎名誠の「本の雑誌」にそっくりな季刊誌だが、中身はかつて尾崎喜八串田孫一をはじめとする文人山岳家が拠っていた名山岳誌「アルプ」を彷彿とさせるエッセイや山行レポート主体の読みごたえのある編集で、自分もこれまでに何冊か買って山行に携え、テント泊の無聊を慰めてきた。
 この雑誌の編集人の方からメールがあったのが昨年の12月。実は以前に拙サイトの山岳パノラマへのリンクを依頼されたことがあって、まったく突然のコンタクトではなかったのだが、メールの用件には驚いた。見開きカラーページの写真と文章の連載を、というのだ。
 これまでプロの山岳写真家の方が数年間担当していた企画で、そういえば丹沢の雪の稜線の向こうに浮かぶ東京の光を撮ったプロならではの写真が印象に残っていた。その後を受けてなぜこんな素人にと、最初は困惑したのだが、結局、思い切って受けることにした。もとよりこの雑誌が求めているのは、本格的な山岳写真などではないし、文章の量も相応にある。素人ならではの視点で、山の風景を愛でることはできるのではないかと考えたのだ。拙サイトの「山の印象」というシリーズを気に入って依頼していただいたという点も少し心強かった。メールを何度かやりとりして写真を決め、タイトルもさんざん悩んだ末に、結局サイトと同じとした。
 その「山の本」'08春号が今日届いた。連載1回目が載った号だ。こわごわ開いてみると、う〜ん、まあこんなもんかな。心配していた写真は、何しろ400万画素のコンデジのものなので少し眠いし、なぜか全体に少し赤っぽい。解像度的には特に問題なさそうだが、色の鮮やかさの点でやはり苦しい。一方文章は、1行空きが変な位置に来たのはまずかったなと思うものの、内容的には自分にはまだ客観的に評価することができない。結局、うれしさも中ぐらいの掲載誌、というところだろうか。
 さて、年4回、それぞれの季節に合った、それなりに見どころのある写真と気の利いた文章を用意しなくちゃならない。この後、どこまで続けられるか、はなはだ心もとないが、せっかく頂戴したスペースだ。気負わず素直に山へのオマージュを奏でられたらと思うのである。