ブリ大根

 食材の取り合わせには、時として感嘆措く能わざるものがある。たとえば、鯨に水菜、鱧と梅肉、トリュフと卵(食べたことないけど)…、どれもよくこんなの考えついたなあというペアリングだが、やっぱり最右翼はブリ大根じゃないだろうか。
 スーパーでブリのアラを見つけたら、たちまち飴色になった大根が目に浮かび、野菜売場に取って返す。意気揚々と両雄を連れ帰り、嫁さんに呆れられながら男の台所遊び。米のとぎ汁で大根を下茹でし、酒・味醂・砂糖・醤油のカルテットでブリと親和させる。すると過剰すぎるブリの油と魚味が、今や苦みを抜かれて淡白になった大根に馴染み、琥珀の輝きと絶妙の味わいを獲得する。魚臭くはあるがどこかでそれを昇華した、根菜の実質だがもっと誘惑を感じさせる、一種ハイパーな食物の誕生である。
 とまあ、そんな形而下学的考察をブツブツ唱えながら、染め付けの大鉢に盛って食卓に運ぶ瞬間の期待感と恍惚感。ブリ大根はまこと罪な食べ物である。
 味の染み具合が今いちだった