マウリツィオ・ポリーニ『ショパン夜想曲集』

 これもmp3化して楽しんでいるアルバム。ポリーニといえば、言うまでもなく現存する最高のピアニスト。一般には若い頃のメカニカルな演奏のイメージが強いけれど、最近の録音は、音の粒立ちはそのままに、円熟味を感じさせるものになっているというのが大方の評価。CD化が近いという2度目のベートーヴェン後期ソナタが楽しみ。
 その「丸くなった」ポリーニノクターン。かつての百貨店のBGMの定番2番をはじめ、サロン的な雰囲気にあふれた曲集だけど、ポリーニはさすがに百貨店にマッチするようなぬるい弾き方はしていない。甘美でロマンチックな演奏であることは間違いないが、かといって洗練と精緻に主眼を置いた演奏ではなさそう。ポリーニはサロンの厚いカーテンをかき分け、窓を押し開いて、外気を導き入れようとしているよう。音楽はしなやかに走り始めたり、突然激しく輝いたりする。iPodに入れて青空の下で聴きたい夜想曲と言おうか。個人的にはとても気に入っている。

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