丹生樵歌


 10日前に落札して以来、首を長くして待っていた古書がようやく届いた。地元、旧山田村に産した江戸末の漢詩人、山田翠雨の詩集『丹生樵歌(たんじょうしょうか)』。ぜひとも手に入れたかった探求本だ。遂にと快哉を叫びたいところだが、手に入れたのは端本一冊、しかも御覧の通りかなり草臥れた代物。もっとも、そのせいもあって初値で落ちたのだから贅沢は言えない。
 万一オークションにひょっこり現われることがあったらと、ほとんど期待せずにアラートをかけていたのがよかった。この傷み具合からすれば、どこかの旧家の蔵に眠っていた一冊なんだろうな。きっと4冊揃っていたはずだが、残り3冊は助からなかったということか。
 表紙はボロボロだが幸い本文はほぼ無傷なので、コピーをとって凧糸でかがり、普段使いの一冊に仕立てる。さっそく拾い読みしてみると、身近な地名をタイトルにした詩がいくつも見つかり嬉しい。翠雨の詩箋にのぼった景色をカメラで確かめに歩いてみるのも面白いかもしれないな。いよいよ残り3冊との遭遇が待たれる。
  翠雨軒所見
 曲曲たる懸崖 草亭を擁し
 霜に染む紅葉 黄逭を雜う
 豪奢 何ぞ必ずしも金谷を望まん
 環匝す 天然の錦繍