螢狩り

 日曜の午後遅くから思い立って蛍を見に出かけた。子どもが小さかった頃、何度か蛍を見に行ったのはどこだったか。記憶は茫々としているが、確か中国道の福崎と山崎の間で、県道から川沿いに少し北に進んだ所と、一応地図上で目星をつけて夢前町の菅生川をめざす。
 さすがに千円走り放題の晴れの日曜、中国道神戸ジャンクションで大渋滞なので、山陽道を姫路西インターまで走り、適当に北上していると、突如前方の山上にこんなものが出現。

 不意を突かれて車を停め、あんぐり口をあけて見上げる。こ、これはどう見たって、かのノイシュバンシュタイン城バイエルン国王ルートヴィヒ2世がたわぶれに築いた新白鳥城ではないか。なぜこんな所に? 誰が? さまざまな疑問が頭を駆け巡るが、今日のテーマはここにはない。大いなる疑問は姫路の空にそのまま放置して北上を続ける。
 日没前に着いた目的地は昔来た川ではないが、いかにも蛍の飛びそうな清流だ。なかなか暮れない空を眺めながら川岸に腰を下ろして待つこと1時間。8時近くになってようやく闇が深まると、川原の草むらや川岸の木立に魔法のように光がともり、やがて点滅しながらふわふわと川面を移る。気がつけば、探すまでもなく、そこここに光の乱舞だ。我々だけだった川岸にいつの間にか人も集まってきた。いいポイントを見つけたみたいだな。三脚に乗せたカメラでバルブ撮影を試みながら、初夏の幻影に魅せられていた。