氷ノ山県境尾根の巨木


 先日の氷ノ山登山の際、戸倉コースで最大と思われるミズナラの巨木の幹周を、あり合わせの細引きで計測してみたことは既に書いた。印をつけた細引きを帰ってからメジャーで計ってみた結果は、何と3m80cm。環境省の巨樹・巨木林調査要綱では、「地上から約130cmの位置での幹周が300cm以上の樹木」が巨樹の定義ということだから、このミズナラは押しも押されもせぬ巨樹といえそうだ。しかも簡易な測定とはいえ、1mは積もっているに違いない雪の上で胸高を測った、つまり規定よりも幹のかなり上を測った結果がこれだから、雪のない時の測定ではもっと太く4mを越える可能性もある(雪のない時にこの尾根に入り込むのはきわめて困難だろうが)。
 この尾根には兵庫県鳥取県宍粟市若桜町の境界が通っているわけだが、GPSのデータを見るとミズナラはどうやら兵庫県の住人のようだ。もちろん、そんなことは自然には何の意味もないのだが、人間活動には地籍は重要だ。1991年発行の環境庁編『日本の巨樹・巨木林』の兵庫県のデータにはこの木は入ってない。そもそも氷ノ山のお膝元なのに旧波賀町のデータには1本のブナもミズナラも含まれていないのだから、巨木調査の目は氷ノ山の山懐まで及んでいなかったことがうかがえる。
 ちなみにこのミズナラの位置は北緯35°19′23.32″東経134°30′12.75″。周囲はちょっとしたミズナラの巨木林になっていて、この木には及ばないが幹周3mを越えそうなものが他にも幾本かある。また、尾根をさらに北上し高度を上げると、三ノ丸の裾を取り巻くブナ原生林の西端にかかり、ここにも目を引く巨樹候補は多い。雪を利して、氷ノ山の巨樹のゼネラルサーベイをやってみたら、きっとすばらしい成果が得られるに違いない。