山座同定

 高度と天候、澄んだ空気にめぐまれた山頂に立った時、山好きの楽しみは、遠く近くに見える山影の一つ一つに正確な山名を指摘し、またそのために持てる山の知識と経験を動員して思案すること、すなわち山座同定にとどめをさす。
 先日の仙丈ヶ岳でも条件にめぐまれて、目をこらして、また双眼鏡をのぞいて楽しい時間を過ごすことができた。なかでもこの日の最大のトピックは、甲斐駒ヶ岳の左肩あたりに、どうも日光の山々と覚しい山影がかすかに見えていたこと。とりあえずと、D40につけていったタムロンの高倍率ズームの最大倍率で撮影して帰ったのが下の写真。

 とくに左の尖ったピークは奥白根山を思わせるが、これだけでは断言しがたい。幸い今は難しい山座同定にも強い味方がある。ふだんは地形図ブラウザとして愛用しているカシミール3Dには、山岳展望をシミュレートする機能もあるのだ。そこで、仙丈ヶ岳山頂から奥白根山を目標に300ミリレンズでねらったという設定で作成した展望画像がこれ。

 みごとに写真にぴったり重なる画像が現われた。やはり左が奥白根山、真ん中に太郎山、右に男体山ほか。間違いなく日光の山々が見えていたことが確認できた。その距離、約160キロ。一昨年奥白根山に登った時は、槍・穂高が見えて興奮したものだが、今回はほぼ同じ距離からの逆方向の遠望がかなったわけだ。めでたし、めでたし。
 当日はもう一つ、北アルプスの長い連嶺もさえぎるものなく見られた。これも写して帰って、同じくカシミールを頼りに山座同定をやってみた。下山後にこんな遊びができるのも、デジタル時代の恩恵。
仙丈ヶ岳からの北ア全景・山名入り