火星その後

 あの火星探査車はどうなったのだろうと、久しぶりにNASAのサイトをのぞいてみた。最近は北極に着陸して土壌分析で水を見つけたフェニックスの方が注目されてるが、4年も前から火星の上をうろうろしている2台の探査車もまだ頑張っている。1年以上前に紹介した時には、確かその1台のオポチュニティがクレーターへの下降をめざして、その縁で砂嵐をやり過ごしていたのだが、今日見ると、みごとクレーターの底に下りて、いろいろ調査をしてから、また砂勝ちな斜面を登って、縁に戻ったところらしい。
 これが登ってきた軌跡をふり返った写真。向こうにはけっこう深いクレーターが写っている。いやー、よく戻ったなあ。オポチュニティは当初、90火星日の耐用期間を想定していたらしいのだが、すでに1600火星日を超えて活動しているという驚異的な精勤ぶり。もう1台のスピリットも車輪を一部故障しつつも頑張っているらしい。この2台は自走式のロボットなんかではなく、遠隔操縦のマシンなのだが、こうなるとロボットに対するような思い入れが生まれて、遠く地球からエールを送りたくなる。
 で、何となく思い浮かんだのが、「ターミネーター2」で主人公の少年を守るターミネーターを見ながら、その母親が抱く「このマシンこそがどんな人間の男にもまさる理想的な保護者だ」というような感想。確かにねえ。機械はどんな悪条件でもブレないしメゲないし変節しない。ひたすら着々と目的を果たすのみ。分野によっては人間よりも機械にまかせた方が良い結果につながるケースも多いだろう。
 たとえば政治だって、人間をたちまち重圧で押しつぶしたり、権勢欲の権化に変えたり、スキャンダルで周囲の人を不幸にしたり、素の人間には絶えがたい火星にも劣らない過酷な世界と言えるわけで、もし完璧な政治判断マシーンというようなものがあったなら、それにまかせる方がより多くの人を幸せにできるかもしれない。このところの日本の政治家のあなたはなぜ政治家になったの? と尋ねたくなるような惰弱さや、アメリカの政治家の家族をもキャンペーンに巻き込んで恥じない、そして必ず後に禍根を残すに違いない厚顔さを見るにつけ、半分本気でそう思うのである。