稲子岳二重山稜
先日の八ヶ岳登山。タイミングよく晴れ渡った東天狗岳からの眺めで、目を引いたものの一つがこの不思議な地形。中山に続く山上台地の東端が一段下に落ちてテーブル状の台地になっている。地形図で見るとこんな感じ。
調べてみるとこれは二重山稜地形の一種のようだ。もとは上の台地と一体だったものが、ずり落ちて現在の状態になった。奥行きが500mもある巨大な二重山稜だ。それにしても、なぜこんな大きな地形ができたかというと、それに先立ってさらに巨大な地異が起こったらしい。
それが9世紀に稲子岳と天狗岳の東側で発生した山体崩壊で、地震か水蒸気爆発がその原因と考えられているらしい。水蒸気爆発ならば、歴史時代に生じた八ヶ岳唯一の火山活動だ。広範囲に山が崩れ落ち、大月川岩屑流と呼ばれる岩なだれが千曲川にまで達して、大きなせき止め湖ができたという。その名残が南牧村に残る海尻や海ノ口といった地名。この大災害は当時の歴史書にも記録されているそうだ。
稲子岳の二重山稜は、この山体崩壊で崩れ残った部分がずれ落ちたもの。だからこの地形は大きいといっても、大崩壊に比べればごく小さなものなのだ。南牧村のサイトには崩壊の推定図があって、その規模に驚かされる。