束の間の秋


 盆の終わりとともに突然過ごしやすい日が訪れた。今日ばかりは短パンの足がスースーして頼りない。天気図を見ると、南海の空気に代わって大陸の高気圧が列島の上に張り出している。一つではまだ頼りない秋の気団が、二つ三つ固まって日本海に押し出して、たまさか太平洋高気圧を凹ませたようだ。特に夜の涼しさはまるで一月先のよう。折しも満月が南天にくっきり輝いて、蝉の声のぱったり絶え、早い虫の音がかすかに届く夜は、ほとんど秋の風情だ。もちろんすぐに夏空が戻ってくるだろう。まだツクツクボウシの声も聞いていないのだから、秋めくには早すぎる。そうでないと、今年の夏山も御嶽だけで終わってしまう。ただこの束の間の秋は、人にも犬にもうれしい骨休めだ。