鐵齋もどき

 最近、某オークションに出品されていた鐵齋の軸は、なかなかよく出来たものだった。もちろん、贋作としてだが。某オークションには箸にも棒にもかからない鐵齋画が次々に出てくるが、これまで見たなかでは一番の出来だったんじゃないかな。最初はもしかしたらと思ったのだが、よくよく見るとアラが見えてくる。たとえば賛の字が弱過ぎる。鐵齋の書はもっと墨が黒々として濃度が高そうで簡単にはかすれないし、字の姿がもっと奔放だ。またたとえば、絵にむやみに横点が多くて、一見鐵齋風だが、必要のない所にまで打たれていて不自然だ。また中景の林の描き方など、よくある伝統的な筆致で、鐵齋はこんな小賢しい描き方はしない。さらに遠景の構成が曖昧でごまかしっぽい、などなど。でも、四阿の辺りの木立とか、流れと橋の辺りとか、部分的には上手に真似てるなあ。かなり手練の贋作家の手になるものだろうか。オークションではごく安く落札されたみたいだが、最初に市場に現われた時にはどの程度の値段がついてたのか、知りたいもんだ。