氷ノ山 県境尾根


 日曜は今年2度目の戸倉峠からの県境尾根。たぶんこの冬最大の寒波で、中国脊梁山地の山には雪がたっぷり。深い新雪ラッセルで難儀することは目に見えているが、それもまた一興と早朝神戸から走る。
 さすがに波賀あたりから雪が現われ、戸倉トンネルに近づくと両側に雪の壁ができている。雪が降る中、8時、旧道をスキーで歩き始める。降り積もった新雪は数十センチほどもあり、スキーがよく沈むが、気温が低く雪が軽いのが救い。ただ、これでは三ノ丸はとうてい無理だろうと早くも目標変更。前回たどり着けなかった旧三ノ丸の県境尾根1182mピークを目標に、地道に林道を歩くことにする。
 戸倉峠を越えて林道を北に進むと、白皚々の風景はますます凄さを増す。見上げる県境尾根上部には鼠色にガスがかかり、氷ノ山本体は今日はホワイトアウトに近い状況だろう。林道の周囲の杉の植林地も分厚い雪をまとって、まるで北国のモンスターの森だ。あれは霧氷が木全体を覆い尽くしたもので、これは降り続いた雪が枝葉に積もったものだから、一時的な疑似モンスターに過ぎないが迫力はなかなか。湧水が流れているのか、雪をうがって地面が見えている深い溝を覗き込むと、積雪深は1m50はある。
 旧三ノ丸から西に下る最短の尾根に取り付くべく、ひたすら林道を歩いて該尾根の末端をめざすが、道は大きく下り始め、その先に見える目標の尾根は若い植林にびっしり覆われてとても登れそうに見えない。地形図だけではそこまで読めなかったなあ。仕方なく少し戻った尾根から取り付くが、出だしからスカスカの笹を隠した難儀な雪。またまた笹踏みラッセルの悪夢の再来。密に植林された若い杉の枝をくぐり、スキー板の取り回しに苦労しつつ笹の斜面をよじって、雪まみれになってジリジリ高度を上げる。
 中間部から大きめの杉の林に突入。見上げるモンスター化した杉の姿が面白く、いつもは疎ましい植林地も、今日ばかりはいい被写体。杉の足元には、雪のシェルターの下、静謐な空間が広がっていて、大雪の夜にこんな所にテントを張ってみたら面白そう。ただ、温度が上がればたちまち枝から大きな雪の爆弾が降り注ぐことになるだろうが。植林地を抜けて県境尾根に近づくと、斜度が緩くなり雪をかぶった笹藪も歩きやすくなる。GPSで位置を確認しつつようやく県境尾根到達。取り付きから1時間以上かかった。
 旧三ノ丸を踏みに行くことも考えたが、もう2時近いので断念して小休止の後、尾根沿いに下り、山スキーの下降ルートになっている広闊な谷に入る。結局登路としてもここがベストか。その間、雪で真っ白な尾根は方向が分かりづらく、たびたびGPSで確認しつつ進行。初めて、ログ取りだけでなく、本来のナビゲーション機能で有用さを実感した。
 シールを剥いで下る林道は、行きのトレースがあってもスキーがまったく滑らない。しばらく行くと、途中で引き返した後続スキーヤーがいたようで、少しトレースがしっかりするがそれでも滑らない。クロカン歩きで峠近くまで戻ると、さらに何人かのシュプールが重なる。稜線へ向かって登っているスノーシューの跡もある。この忘れられたコースにも、珍しく今日は何人か偵察にやってきた人があったよう。おかげでトレースはもう立派なコースになって、がぜんスキーが滑り出し、気持ちよく板に乗って旧道を下る。3時半、車帰着。登山者のものと覚しい車が、まだ1台残っていた。
戸倉トンネル〜県境尾根GPSログ
雪に埋もれた戸倉峠
戸倉林道雪景
植林杉のモンスター
巨人を見上げつつ進む
静かな杉林の空間
県境尾根の若木の林
帰りは立派なトレースが