米予備選

 今日配信されたJMM冷泉彰彦さんのメールマガジンによると、ヒラリー・クリントンニューハンプシャーでの逆転勝利の勝因は、直前に彼女が見せた「涙」だったそうだ。といっても早合点しがちなのだが、男性の同情票が流れたのではなく、女性の票が雪崩を打って戻ったのだという。
 元来、「強い女」「鉄の女」のイメージを作り上げてきたヒラリーだが、それゆえに立派すぎる遠い存在として敬遠する人も、オバマの清新な魅力との対比のなかで、この所増えていたようだ。それが先のオハイオでのオバマブームの背景らしい。ところが一瞬の涙によって、「『余りにも強く立派で、もう遠い存在だったヒラリーも自分と同じ女性だったのね』」と女性たちの心を動かし、「自分たちのアイデンティティを投影する対象としてのヒラリーが危機に陥っている、しかも初めて人間味を感じさせてくれたということで『大変だから行かなくちゃ』という投票行動になった」と、冷泉さんの分析は明快だ。
 なるほどね。オバマに変革を期待させる清新なサクセスストーリーと初の黒人大統領をめざすという2つのドラマがあるなら、ヒラリーにもある、けれどそれを敢えて封印してきたようにも見える、女性初の大統領をめざすというドラマが、ここにきて意図せずして女性たちの意識の表面に浮かび上がり、大きな力を発揮した、ということかな。米大統領選をめぐる候補者たちの一言半句も揺るがせにできない綱渡りと、有権者のだれにも予測できない心の動きは、下手なドラマよりもはるかに見ものなのだ。
(しかし、これが「涙」なら、ヒラリーってどれだけ剛直なイメージなんだ!?)