雪中群鹿図

 先日の氷ノ山で面白かったのは、林道といい山といい、そこいら中に鹿の足跡というか、深い新雪をズボズボ歩いたラッセルの跡が残っていたこと。兎の足跡も多かったが、鹿の気配が圧倒的で、林道全面にまるで鹿の集会でもあったように、無数の足跡が広がり、そこから列をなして離れたと覚しい不思議な痕跡も残されていたりした。
 もちろん実物の姿にも何度か遭遇。彼らも深い雪に足を取られて、疲れているのか、動くのが億劫なのか、藪のなかの意外に近い場所で、いきなり雪を蹴立てる音が起こったり、モッサモッサと逃げ出す姿がひらめいたりした。ほかにも、鹿の寝床と覚しいものや、真っ直ぐな林道をわざわざ蛇行して歩いている、何を考えてるんだかと言いたくなるような足跡などに思わず頬が緩んだ。敗退の山行にもそれなりに楽しみは少なくないのだった。