槍平雪崩

 年が変わる頃に発生した雪崩で4人の命が失われたという。現場が槍平と聞いて耳を疑った。雪崩とは無縁な安全圏というイメージがあったからだ。新穂高温泉から右俣谷をさかのぼり、白出沢・チビ谷・滝谷と穂高側から落ちる枝谷を渡って、左手に深かった流れが登山道レベルに近づき、谷が伸びやかに広がった所が槍平。水の豊かなダケカンバの輝きが気持ちのいい、槍ヶ岳や南岳登山の前進基地だ。無雪期にはこれまで3度通過したし、そのうち1度はテントを張ったこともあるが、今回雪崩にやられたのはあのテント場のよう。まさかあんな所がというのが正直な感想だ。
 ただ、真西にそびえる奥丸山の直下には崩壊地があって、そこから大きなガレ谷が槍平の流れをはさんだ対岸に押し出していた(地形図)。あの谷に年末寒波で大量に溜まった雪が一気に滑り落ちたとしたら、テント場にも末端が及ぶことはあるかもしれない。ニュースを見ると、雪崩は奥丸山側から出たということなので、やはりそういうことなのだろう。
 雪山では、特に大量の積雪があった時は、雪崩から完全に安全な場所はない。今回の事故はそれを如実に教えている。