菊池五山

 ○春初絶句
 淡日輕煙 春已に饒し
 門を出でてまた溪橋を渡るに懶し
 新年第一詩 なお未だし
 恐らくは梅花に寂寥を笑はれん
 強力な寒気におおわれた今年の正月。新暦の1月はまだ冬の6合目辺り? 散漫に和本を繰って捜し当てた江戸の初春の詩にしか、まだ春の色香は存在しない。詩人は、新年の詩をいまだ詠んでいないがゆえに、橋を渡って梅を見に行くことをためらっているが、こちらは梅の蕾の膨らみ具合を確かめに出る気にもなれずに、ひたすら暖房の効いた部屋に閉じ籠もっている。
千鳥屋の俵ねずみのお饅頭