GPSログの楽しみ

 ハンディGPSトラックログに時間データが残せるようになって、新しい楽しみ方ができるようになった。カシミールの地図上でその日の歩きをそっくり再現するのである。再生速度は自由に選べるから、たとえば20倍の早送りにすれば、3時間の行程が9分で復習できる。地図上で赤い軌跡を引きながら人型のアイコンが、苦労した登りはじりじり進むし、下りは速いし、休憩時間もそっくり同じ割合で静止する。GPSデータというのは、緯度経度と時間を記録した、実は簡単なテキストファイルに過ぎないのだが、苦労した登りや長い縦走の後でその行程をこうして振り返ると、無味乾燥なデータからその時々の息づかいや汗、苦と楽、希望と断念さえ蘇ってきそうだ。
 もちろんハンディGPSの第一義的な役割は、ルートファインディングの助けになること。道を失った時や道無き山で安全に進行あるいは撤退できる確かな位置データと進行の指針を与えてくれることだが、それに劣らずトラックログが記録できるメリットも大きい。山を歩いた軌跡が明確な線として記録されるのは、それが特に道無き山や道にこだわる必要のない雪山などの場合は貴重なデータになるし、こんな風にその日の登山をダイジェストする楽しみもある。これからの季節、さらに活躍の機会が増えそうだ。