ニコン展示会


 用事帰りに誘われて新大阪で開かれているニコンの新製品展示会をのぞいてみた。会場に入ってびっくり、ウィークデイなのに、いやだからこそか、カメラじいちゃんたちでごった返している。シルバー世代がブースに列をなし、熱心に新製品をいじくり回しつつ係員と長話している。おかげでこちらはカメラを手に取ることさえできずに退散。収穫はお土産のニコンオリジナル切手一枚だけ。で、悔しまぎれに思った。
 土日の展示会にどの程度の若い人たちが来るのか知らないが、フィルム一眼がデジタル一眼になっても、本格カメラの中心的な受容層の年齢はかなり高そうだ。カメラ世代と呼んでもいいかもしれない。若い頃、高嶺の花だったカメラへの憧れを今も持ち続けている世代。だいたい団塊の世代から上辺りだろうか。彼らは常に最新機種で武装し、カメラクラブに集ったり、撮影会に参加したり、海外の辺境へ撮影旅行に出掛けたりして、無数のシャッターを切り、業界を下支えし続けている。しかし、情熱と購買力を併せ持ち、集団性の高いこの世代がいずれ退場した後、日本のカメラ業界には大きな地殻変動が起こるのではないだろうか。手軽なコンパクトデジカメと携帯カメラに慣れた世代は、本格カメラに憧れを持たない。まして趣味的な高級カメラなど必要としないだろう。もちろん日本のカメラは世界に売れるが、国内に分厚い受容層の有る無しで、開発の瞬発力や技術の緻密な創造性はずいぶん違ってくるのではないだろうか。