テロ特措法

 「給油継続無理なら退陣」首相、法整備に決意(朝日夕刊)
 これを読んで、この人はダメだと思ったな。一国の首相が他国の艦船に給油する任務に政権を賭するというのはあまりに軽すぎるし、バランス感覚を疑わせる発言だと思う。それが米豪首脳との会談の翌日にシドニーで行われた会見での、対テロ戦争参加国を意識したものであったとしても、こんなおもねり方はするべきじゃない。
 第一、この人は7月に「生活第一」を掲げた民主党に大敗したばかりじゃないか。歯止めのない長時間労働ワーキングプアなどの国民が直面している問題を差し置いて、「美しい国」だとか「憲法改定」だとかいう、保守教条主義的な姿勢が痛棒を食らったばかりだというのに、まだこんなことを言ってるというのは、救いがたい政治感覚の欠如だとしか言いようがない。たぶんこの人は国民の生活などより、国家の使命だとか国の威信だとか、大時代的な政治美学にしか興味がないんだろうな。政治家の家に生まれ、政治のプロになるべく育てられた、純粋培養的政治家の欠点を体現した人だと思う。
 これで自民党も見切りがつけやすくなったんじゃないかな。ケチのついたトップ自らがデッドエンドを設定してくれたんだから。テロ特措法延長に失敗して、内閣総辞職、新しい顔で出直す場合と、逆に力業で特措法を伸ばして安倍内閣のままで行く場合と、どちらが次の総選挙に有利か。自民党内部では冷徹な計算が進んでいることだろう。