火星

 もうすっかり忘れていたが、あの探査車はまだ生きているらしい。2004年に火星に着陸し、あちこち動き回って面白い写真を送ってきていた2台だ。当初想定していた寿命を大幅に超過して、火星探検は今も続いているようだ。その1台、Opportunityが最近送ってきたという火星の写真。クレーターの縁からそのすり鉢状の斜面を写したものだが、実に不思議な地形が見える。露出している大きな岩が、モザイクタイルみたいにみごとに平らに磨かれているのだ。何が磨いたかといえば、もちろん風とそれに乗ってぶつかる砂だろうが、地球上では絶対にあり得ない風景だ。雨や流水のある地球では、斜面に露出した岩が風に削られるほど長くその場にとどまっていることは考えられないし、風がそれほど強力な研磨力を持っていることも稀だろう。地球に似ていながら、やはりまったくの別世界、火星。
 ところでOpportunityは今何をしているかというと、この大きなクレーターへの下降をめざして、その縁にとどまり砂嵐をやり過ごしている最中だそうな。クレーターの底に降りることは大変な冒険で、2度と地上に戻れない可能性もあるが、それでもやる価値はあると、NASAの科学者たちはコメントしているみたいだが、子どもの頃の夢そのままに火星探検を日々体験している彼らのワクワク感が伝わってくるような話じゃないか。