ユウスゲ

Hemerocallis citrina var. vespertina
 数日前からユウスゲが咲いている。夕暮になると、2mもある花茎にレモンイエローの花が開く。うちの宿根草では一番背が高く、花壇から抜き出て咲く様は、夜目にも鮮やかだ。たくさんの園芸種があるヘメロカリスと同じワスレグサ属の原種で、日本の固有種。ヘメロカリスのなかではずば抜けて花茎が長く、夕方に咲く性質といい、個性的な種類。この形質はまだ園芸種に導入されたことはないんじゃないだろうか。
 ユウスゲといえば、もちろん立原道造。「ゆうすげびと」という詩があるし、詩集「萱草(わすれぐさ)に寄す」の萱草もたぶんユウスゲのこと。庭では見上げるほどに軸を伸ばす花だが、野にある時はもう少し控えめな草丈で、その花の淡く優しい様子が詩人のお気に入りだったのだろう。そういえば、葉も花弁も細く繊細で、背丈だけは高いこの花の姿は、どこか立原道造その人のイメージに通じるものがあるな。
 かなしみではなかつた日のながれる雲の下に
 僕はあなたの口にする言葉をおぼえた、
 それはひとつの花の名であつた、
 それは黄いろの淡いあはい花だつた、