象潟

 合歓と芭蕉の句から連想がつながった象潟は、10数年前に訪れて以来、心に残っている土地だ。かつては浅い内海に小島がたくさん浮かぶ松島と並ぶ名所だったのだが、1804年の大地震で土地が2mも隆起して、今では一面の田圃のなかに小山が散在する風景に変わり果てている。いわば名所の廃墟。ただ、小山には海中だった時代から生えていたに違いないみごとな古松が盤踞していて、周囲の水田の緑を頭のなかで青に置き換えると、かつての象潟の風景が偲べなくもない。干上がった潟を新田に変えた折、小山を平にしてしまわなかったのは土地の文化の叡知というべきだろう。小山には松だけでなく、船着場の跡と覚しい石垣なども残り、能因島とか何とか以前の名前もついていて、それを子どもと見て回ったのも懐かしい思い出だ。実はこの特異な地形は、鳥海山が太古に大規模な山体崩壊を起こした際、その末端にできた「流れ山」と呼ばれるものらしい。鳥海山はいつかは登ってみたい東北の名山の一つだから、今年あたり他の山とセットで長期遠征してみるのもいいかもしれない。もちろん象潟再訪も含めて。
□象潟リンク 地質 地形図 ライブカメラ