国民投票法案

 国民投票法案、衆院通過。憲法書き替えへの布石が、憲法書き替えを問うて得たのではない議席数を背景に着々と進んでいる。
 最終的な判断は国民に委ねられているとはいえ、国際関係のパワーゲーム性のみを強調する、リアリストと称される人たちのマスコミでの露出がめだっている現状では、国民投票の成り行きは微妙だろうなあ(お得意のリアリズムで、国家間のパワーの角逐の結末の悲惨についても、しっかり語ってもらいたいもんだ)。
 その前段階の、衆参両院での2/3以上の賛成が発議の要件というハードルも、民主党の動向次第。まあ、施行は公布の3年後ということなので、3年先の北朝鮮情勢、中国との関係、中東情勢とアメリカのスタンス次第で、ずいぶん空気は変わっているかもしれない。安倍もまだ居るかどうか分らないし。
 それはともかく、今回の法案で気になったことが一つ。国民投票のテーマを憲法改定に限定する、って何なんだ? 以後一切、憲法改定以外の国民投票を認めないということならば、これはひどい話じゃないだろうか。民主主義というのは、代表を立てる議会制だけが唯一の形じゃない。直接民主制が最終的な民主主義の理想形という考え方もあるはず。ネットワークの発達で直接民主制がまったくの夢幻ではなくなってきた時代に(範囲が限られる地方自治なんか、それで済んじゃうかもしれない)、これは民主主義の可能性の抑制ではないだろうか。まあ、議員たちにとっては、国民投票というのはある意味、自分たちの頭越しの決定だから、あまり多用されたくない制度には違いなかろう。憲法は変えたいけれど、その過程で国民投票、ひいては直接民主制の可能性が人々に認知され、応用範囲が広がるのは阻止したい。そんな議員たちの自己保身の思惑が、ここに見て取れるように思うのだ。
椿・覆輪春の台