願教寺山

 上天気の金曜はまた山へ出奔(^^;。2002年以来毎年この時期に訪れている石徹白の最奥の山域をめざす。寡雪の今年はきっと林道の除雪も早いはずで、あわよくば大杉登山口まで車で入ってと前夜石徹白に入ると、林道は中居神社下の入口から少しで進行不能に。こら、ぜんぜん除雪されてないわ。仕方なく路肩で車中泊
 翌朝はそのまま車を離れて林道を進む。今日は久々にガチガチの山スキー靴を履かない登山なので、長い林道歩きも問題ない。あちこちで落石や残雪が残る林道をせっせと歩いて、1時間半足らずで大杉登山口。ここから山に取りついている白山南縦走路を横目に、急に頼りなくなる林道を進むと、まもなく大滝の難所。一気に狭く深くなった谷斜面を、かろうじて廃林道が通じている個所。毎年この時期、道は山腹から雪崩れた雪でほとんど埋まり、谷底へ一直線のただの雪の斜面になっている。足を滑らせたら、もちろんただ事ではすまない。けど今年は雪が少なく、道の端っこが出ていて、アイゼン無しで歩いて行ける。数少ない寡雪の恩恵を感じる場面。
 母御石谷橋まで来ると難所も終わり。笠羽谷出合にかかる橋を渡って、右岸台地に上がれば、そこは石徹白の桃源郷と呼びたい気持ちのいい場所。ここにテントを張って、伸びやかな山々の眺めを楽しむのをこのところの恒例としていたのだが、今年は身軽な日帰り山行の装備で通過。さすがに雪が少なく流れがほとんど出ている沢を危うくスノーブリッジで渡って、願教寺山とよも太郎山の鞍部に発する谷を遡っていく。
 広々とした谷で、左手には日岸山に続くなだらかな尾根が青空をバックに伸び、右手にはめざす願教寺山が谷越し、尾根越しに頭をのぞかせる。ここ2〜3日の花冷え寒波で新雪が薄く積もっていて、山々は真っ白。その下の黄砂で黄色くなった雪も、この時期に特有の波うった雪面も新雪が覆い隠して、まるで厳冬期のようなまばゆい風景。今日の登山のタイミングの良さに感謝する。
 1時間ほどで鞍部に登り着いたら稜線を右へ。福井県側の険しい谷を見下ろし、間近に迫ってくる願教寺山南西面の断崖を望みながら進む。最後はアイゼン・ピッケル武装して、南東側の真っ白な大斜面に取りついて、急斜面を一直線に山頂へ。見下ろせば足がすくむような斜度だが、新雪の下のよく締まった雪にピックをしっかり打ち込みながら、上だけを見て四つんばいで登れば不安はない。斜度がゆるんできたと思ったら、突然山頂に飛び出した。
 山頂は広い雪のステージで、もちろん展望は360度。登り着いた真っ正面に、三ノ峰とその左に白山の壮麗な姿が一気に展開したのが、もう経験済みとはいえ、またしても声を上げてしまう瞬間だった。振り返ると登ってきた鞍部の向こうに、よも太郎山・日岸山・薙刀山と続く石徹白の山々。そして東西に細長い山頂の雪面の向こうに浮かぶのは、経ヶ岳・赤兎山・大長山の連なり。幸福なひとときを過ごして、またきっと来年もと山頂を辞した。
 予定ではその先、銚子ヶ峰へ回り、白山南縦走路を歩いて登山口に下るつもりだったが、1800mの稜線まで行くのが億劫になったのと、まだ歩いたことのない笠羽谷の廃林道をたどってみたくなり、笠羽谷源頭辺りで昼食をとってから、針葉樹の多い大きな尾根を林道へ下降。山スキーで滑れば気持ち良さそうな大斜面を、石徹白の山々の大パノラマを楽しみつつのんびり下り、ずっと雪のスロープになっている林道をアイゼンのおかげでさして不安なく歩いて、出合の橋に帰着。その先は、春山の余韻に浸りつつ2時間の林道歩きで一日を終えた。 
落石残雪が残る石徹白林道(拡大)
大滝の難所も今年は楽
この橋が楽園の入口
ここが石徹白の桃源郷
かろうじて残るブリッジを渡って
願教寺山が近づいてくる
新雪のついた願教寺南西面
ときおり落石の音が響く
歩いてきた稜線の向こうに日岸山
さあ最後のひと登り
見下ろすと足が震える
頂上直下の雪庇と銚子ヶ峰
三ノ峰と白山が大きい
南には石徹白の兄弟峰
ひと下りして山頂を見上げる
白山南縦走路の峰と笠羽谷源頭の高原
石徹白5座と1615m峰の揃い踏み
笠羽谷林道からは日岸・薙刀がみごと
カモシカが見送ってくれた