杉田淳『デモクラシーの論じ方』

 民主主義の政治制度とその可能性について考えるためのたくさんのヒントを提供してくれる本。というか、考えることを促す問題提起満載の本。AB2人の対話から構成されていて、一人はおおむね現状肯定派、一人はその反対。2人の歯に衣着せぬ議論は対話編としても面白いし、内容も刺激的。
 特に批判派の論者が提出する現状への不信と新しい民主主義の可能性の示唆は、「目から鱗」と言いたいものも少なくない。たとえば、
・議会というのは元来は民主主義と関係なく生まれた制度で、今の議会も人々の意見を十分に反映しているとは言えない。
・二大政党制は人々の想像力をしばり、民主主義を制約するものだ。
・民主主義は必ずしも国民国家に範囲を限定して行われる必要はない。主権的な単位を限定することは弊害が大きい。
・代表制・議会制は民主主義の一つの手段に過ぎない。議会=民主政治だという考え方は本末転倒だ。
・コンピュータネットワークの発達で直接民主主義の実現可能性は高まっている、などなど。
 ほかにも憲法を重視し過ぎる“憲法フェティシズム”の危険性を説くなど、日本の現状に具体的に即したさまざまな論点が提出されている。国家や議会制、二大政党制など、固定された枠に民主主義を閉じ込めるのではなく、より国際的に開かれると同時にローカルに細分化された、重層的な民主主義のあり方を同時に追求していくべき、という議論は大いにうなずけるものがあった。
 折しも統一地方選挙街宣車の連呼が喧しい。あんなものが民主主義の具体的な形だと思えば情けないが、この本を読んで、少しは未来に光が見えなくはない気もしてきた。ちくま新書の一冊。