早春小景

 季節の帳尻を合わせるように俄かに舞い戻った寒さが続く。庭の花たちの春支度にもきっと急ブレーキがかかったに違いないと、セーターをもう一度厚めのものに戻した自分に引きくらべて考える。けれど、マクロレンズを付けたカメラを片手によくよく見て回ると、蕾は間違いなく膨らんでいるし、霜で固くなった土を押しのけて、緑の芽は顔を覗かせ始めている。気まぐれな気候の変動を、誤差の範囲内だというように大きな度量で受け止めて、植物たちはじりじりと前進を続けていたようだ。生き物の歩みはけっして滞ることも後退することもない。
木蓮の蕾に花弁が覗いた
洋ズイセンの蕾が頭角をあらわす
ヘメロカリスの新葉の噴水
ヘレボラスは今が満開