雪しぐれ

山家の雪
 地形図でいえば緩斜面といった感じの、間延びした等圧線の東高西低の気圧配置とはいえ、今日は日本海からはるばる山を越えて来た雪雲が、時折この辺にも到達するようだ。薄日が差していたかと思えば、さっと雪空に変わり、ひとしきり景色がかき消されるほど降る。といっても屋根を濡らすだけの脆そうなぼたん雪で、気がついた時にはまた空に光が戻り、どこにも白いものは残っていない。こんなことを何度か繰り返す、ちょうど初冬のしぐれが雪に変わったような天気。
 「雪しぐれ」という言葉が自然に頭に浮かんで、ちょっと検索してみると、和菓子やら時代小説やら演歌やらのサイトに混じって、気象庁のページも引っかかってくる。気象用語の解説ページに、意外にも「雪しぐれ」が見つかる。頭に×がついている。「日本海側の地方や、太平洋側でも山脈の風下側の山麓に当たる地方で、冬の季節風によって雪が降る場合に、日が射したり雪が降ったりする状態を『雪しぐれ』と呼ぶところがある。」と解説されている。備考には「『「しぐれ』は古くからある言葉であるが『雪しぐれ』は近年の造語である。」とある。頭の×は、使用を控える用語という意味のようで、気象庁的にはまだ市民権を得た言葉ではないらしい。
 確かに「雪しぐれ」とは、しぐれみたいな雪降りという発想そのままの、何の工夫も面白みもない名前。時雨がゆかしい言葉だけに、頭の雪はどう見ても余分だ。けど考えてみると、この寒波の余波の間欠的な雪降りは、表日本の冬にはなじみの気象現象であるはずで、これまで独自の名をもらえなかったのが却って不思議という気もするのだ。何かふさわしい名称はないもんだろうか。