竹外二十八字詩

 ○秋夜、宮原子淵が宅に宿し、書を読み、雨を聴く作
 暁寒、たちまち動く、読書のとばり。
 灯火は蛍火の微かなるよりも微かなり。
 小雨、声あり、三五点。
 あやまって疑う、落葉の軒を払って飛ぶかと。
 夜も更けて本を読んでいると、夜気が前触れもなくとばりを揺らす。
 気がつくと明かりが蛍の火よりも小さくなっている。
 いつの間に降り出したのか、小雨の滴が屋根にぽつぽつと音をたてるが、
 しばらくそれと気づかず、落ち葉が軒に触れる音かと思っていた。
 『竹外二十八字詩』は摂津高槻の漢詩人、藤井竹外(1807〜1866)の漢詩集。「絶句竹外」と賞され、その七言絶句はよく読まれた。幕末から明治にかけて何版か出た『竹外二十八字詩』は、今も古本でよく流通していて割合安価に入手できるので、江戸漢詩の木版本入門にはぴったり。