豆を煮る

 ゆえあって黒豆を煮ることになった。そこで、本やらネットを調べてみてわかったのは、黒豆というのは恐ろしく時間のかかる素材だということ。まず一晩調味料を加えた汁につけて、豆を膨らませる。その際、重曹と錆び釘もいっしょに入れれば、より柔らかくなり炊き上がりの色もいちだんとよくなる。その後長く火にかけるのだが、その時間が諸説とりどりで、2〜3時間から長いのは8時間なんてのもある。電子レンジを使う手もあるが、240分加熱というんだから、これも長い。4時間のチンなんて、どう考えても現実的ではない。さらに煮上がってから一晩寝かせて味を染み込ませるという意見もあり、黒豆というのはかほどに頑なな素材らしい。
 昔は囲炉裏やら火鉢やらに常住に火があったから、そのマイルドな熱で知らぬ間に美味しく煮上がっている便利な食べ物が豆類であったのだろう。文字通りのスローフードだ。生活のリズムが変わって黒豆の出番は正月だけになった。いや、正月でさえ最近はスーパーで煮豆を買う。
美味しく炊けた