空中写真ノスタルジー

 空中写真というちょっと懐かしい言葉は考えたら変な表現で、知らない人が聞いたら、スカイダイバーの記念写真? などと思われるかもしれない。今では航空写真の方が分かりやすいだろうが、うれしいことに国土地理院を始め、まだ普通に使われているようだ。
 先掲の「国土変遷アーカイブ」は見れば見るほど発見があって楽しいサイト。ユーザーインターフェースも国の機関にしてはよくできている。特によく知った土地の古い空中写真は激しいノスタルジーを感じさせるし、最近の写真との違いは今昔の感を深くさせる。

 これは懐かしい河内狭山の旧観。撮影されたのは、なんと自分が生まれる二月ほど前。未舗装の白い道が走る田園地帯に、ぽつりとある新出来の住宅地の屋根の下には、大きな腹をかかえた若い母親が頬を輝かせていたのだ。この写真には、あの池、あの雑木林、あの田圃…、子どもたちの遊びを柔らかく受けとめてくれた昭和30年代の郊外の環境が上空からまるごと記録されている。

 さて、これは50年後の同じ場所。もう田圃を探すのもむずかしいほど住宅におおわれて、田園地帯の面影はほとんどない。ふるさとは思い出の中にしかないというのは、高度成長の前に生まれた多くの日本人に共通する感慨ではなかろうか。屋根とアスファルト道におおわれたこの写真に、今の子どもたちは何十年か後、ノスタルジーを感じることができるんだろうか。