百名山禍


 日曜の登山。行者還トンネル西口から稜線までの登路の荒れが気になった。去年よりもずいぶん荒れたようだ。大峰は深田百名山にラインアップされていて、南北に長い大峰山脈の最高峰である八経ヶ岳は、当然百名山ハンターの皆さんの標的になる。メイン登山口、トンネル西口の駐車スペースは休日ともなれば大盛況で毎度場所を見つけるのに一苦労。自分は経験はないが、結局停める場所がなく、トンネル東口に回って、少し遠回りのコースを登る人も多いらしい。
 それだけ人が殺到する登山道だから、当然オーバーユース。平坦な稜線コースはともかく、稜線までの急登は人が荒らした表面を雨水が浸食して、至る所で木の根がむき出しになっている。先日のような雨の後ではむき出しになった地肌がよく滑り、特に下りでは度々足をすくわれた。むっつりした表情で座り込んでいる年配の女性の姿を見たが、きっと一度ならず尻餅をつくことになり、罠だらけの道に嫌気がさしたのだろう。
 同じく百名山の福井の荒島岳でも登山道の荒れはひどかったが、荒島岳よりも格段に大きな大峰でもこの状態。トンネル西口には百名山ツアーのバスもやってくる。山は本来団体で登るものではないし、地図が読めない人、自分の現在位置がわからない人が存在していい場所ではない。そんな安易な山登りを可能にしているのは、ツアー登山業者の存在だろうが、ブームという需要がなければ業界も成立しない。登山という自立自尊を旨とする世界においてさえ、右へならえの日本人。深田久弥が現状を知ったら、きっと百名山を書いたことを後悔することだろう。