夏山本番

 とは言ったものの、今年はもひとつ夏山気分が盛り上がらない。梅雨が例年になくあっさり明けてしまったせいで、今か今かと夏山開幕を待ち受ける気分が盛り上がらなかったためか、それとも単に衰えか。そういえば、山巓の空気をリアルタイムに伝えてくれる山小屋のホームページもしばらく見てないなと、お気に入りに登録している南岳小屋のサイトをのぞいてみると、山は残雪に輝き、地は花に彩られて、今年も高山の夏が鮮やかに始まっている。
 もとより夏山の美しさは知っているし、常に憧れの対象でもあるのだが、同時に山は苦しく不快で、時に不安でもあるということも、短いながら10数年の経験で知っている。その印象のバランスは、体力や精神力によって徐々に変化していくものかも知れず、今年のこの乗り気のなさは、もしかしたら年齢によるマイナス要素の気分的増大がプラス要素と拮抗し始めたせいなのではないか、と思わないでもない。
 ただ、山は下界での思惟や予測を必ず裏切るものなのだ。山は常に予想以上に厳しいし、予想以上に美しい。これも我が経験則。だから下界であれこれ考えていたって始まらない。とりあえず登ってみるか、と思うのである。さすれば山は、今の自分にとっての山の美の位置づけを教えてくれるだろう。幸い、今週末はいい天気みたいだ。 

夏雲、輝く