小京都


 といえば、折しも東北旅行から帰って来たヨメさんの話では、東北の小京都、角館はえらく様変わりだそうな。無計画の旅でふらり訪れて、藩政時代そのままに残る武家屋敷群とその庭に盤踞するシダレザクラの大木が落ち着いた調和を見せたあの町に感動したのはもう20年近く前。まだ訪れる人も少なく、観光的な作為もほとんど感じられず、武家屋敷の敷地に入るのも、他人の生活の場に踏み込むようで気が引けたものだが、今では武家屋敷にも売店ができたり、すっかり観光施設化しているらしい。ノスタルジックな散歩が楽しめた通りも、過剰整備で映画村のような雰囲気になり、歴史の香りを薄めてしまっているよう。けれど撮ってきた写真を見ると、屋敷を囲むシダレザクラや松、楓の大木は今も鬱蒼として、浅薄な観光化が露わになるのを防いでくれているようでもある。屋敷の主たちが何百年も前に植えた木々が、今では町の主役となって町を守ってもいるのだ。