氷ノ山

 快晴の火曜日は、またぞろ山に逸出。今シーズン最後の氷ノ山を楽しもうと、10日前と同じ横行林道に入ると、意外にも除雪がかなり進んでいる。除雪終点近くに駐車し、8時半出発して30分でもう林道の分岐。大幅に時間が稼げたので、三ノ丸と氷ノ山本峰をぐるり周回してみることにして、分岐を左に進む。
 三ノ丸のひとつ北にある通称ワサビ谷ノ頭から東に下る大きな尾根に林道から取りつくと、出だしはもう笹が出ていて少し藪を漕ぐ。スキーやストックがひっかかって難渋。雪が戻るとペースも戻り、ゆったりしたブナの多い尾根を、右に氷ノ山の白い高まりを望みつつ登る。大段ヶ平からの尾根の下部はもう笹で黒々している。この尾根の最上部のブナ林はどれも衰え、雪で枝を落としている。古木が林立する見事な風景ももう長くなさそう。次代のブナは育っていないから、これらが枯れたら笹だけの尾根になってしまうのだろう。
 1時間ほどで尾根を登り切り、三ノ丸へ。展望櫓から眺めると、テントを張ったとき霧氷でびっしり覆われていた四阿はそんなことあったかいなという姿で、周辺には猛々しい笹藪が復活している。雪が後退して、自由に歩ける部分がどんどん減っていく風景は寂しい。三ノ丸の大雪原もまた来年。
 幾つか小ピークが連なる稜線をたどって氷ノ山山頂に向かう。二ノ丸の先の横行谷の源頭にあたる鞍部は大きな斜面になっていて、そこに滑りこんでいるスキーヤーの姿が。さすがにこの山は週日にも遊ぶ人がいる。山頂直下まで登り着いて、古千本と雪原を望むいつもの昼食ポイントで荷を広げていると、登り返してきたスキーヤーに声をかけられてしばし雑談。同じく横行からということで、除雪の重機の近くにとまっていた軽トラでやってきた地元の人らしい。作業の車かと思っていたけれど、そういえば荷台にMTBが乗ってたっけ。大段ヶ平への尾根はやはり避難小屋の下で藪が出ているという。
 まもなくスピードに乗って雪原を下っていく姿を見送り、昼食を摂ってから、こちらも足元を固めて滑降開始。ややっ、今日はスキーがよく回る。10日前は小寒波で積もった雪が重く、自分の腕ではスキーを開いてターンに入らなければならなかったのだが、今日は締まった雪の表面が適度にゆるんで、まあ姿はへっぴり腰だろうけど、スキー場並みに軽々ターンができる。嬉々として神大ヒュッテ近くまで滑り、このまま下ってはもったいないと、もう一度30分近くかけて山頂に登り返す。山頂にはいつのまにか3人の登山者の姿がある。みんな中高年。お互い好きですなあと共感の視線を送ってから、再びシールをはがす。いや〜楽しい。こんな雪なら連休のアルプスも楽しいのだろうけど。
 調子よく滑っていくが、大屋町避難小屋を過ぎるとうるさい灌木が現われ、その先の鞍部は雪が消えている。板を背負って下り、少し登り返して、また少し林間を滑って大段ヶ平。すっかり露出した四阿のベンチで甘夏を剥いてから林道を下ると、除雪は上から2番目のヘアピンカーブのところまで進んでいる。スキーを外して、すっかり乾いた舗装路を歩いて2時15分車に戻った。
 寡雪の藪漕ぎから始まって、新雪ラッセル、転けまくりのモナカ雪、重雪といろいろあった今シーズンの氷ノ山だが、最後に滑りやすい雪を与えてくれた。気持ちのいい疲れを感じながら横行林道をゆっくり走ると、最奥の棚田では田起こしが始まっていた。今はまだ褐色の周囲の山肌が、新緑に染まるのもまもなくだろう。
横行谷から三ノ丸・氷ノ山GPSログ
林道の除雪が進む
衰えが目立つワサビ谷ノ頭東尾根のブナ林
雪による枝折れがあちこちに
月着陸船みたいな三ノ丸避難小屋
笹が戻った三ノ丸南面と沖ノ山・東山の山並み
二ノ丸斜面からの氷ノ山本峰
山頂休憩舎と三ノ丸
田起こしが始まった横行谷最奥の棚田