病床の小田実

 BShiで小田実の追悼番組を見た。彼の文学的盟友で同じく癌で死んだ井上光晴の晩年の壮絶な姿は、原一男の「全身小説家」というドキュメンタリーで残されているけれど、それにくらべて小田の闘病は潔いほどに短いものだったようだ。あのエネルギーにあふれた作家が、急速に体力を失いながら、それでも余力を振り絞って著作を口述する姿は、痛々しくも感動的だった。
 番組ではベ平連時代から最近の護憲運動まで、市民運動家としての映像もたくさん紹介されていたけれど、若い頃よりも年をとってからの方が演説は格段に上手だったなあ。特に被災者支援法の制定を求めて、街頭で神戸市民に呼びかけた演説は、小田実の面目躍如たるものだった。
 最後に告別式の様子が少し映ったけれど、式の後、遺骸を見送る人たちの間からごく自然に拍手が湧き起こったのが印象的だった。それは熱にあふれたみごとな一生への喝采だったろう。