海洋無酸素事変

 BS1で再放送していた「石油 1億6千万年の旅」はかなり衝撃的な内容だった。石油は実は地球の過去の大異変の産物で、人類は石油を使うことで大異変の因子を再び急速に復活させているんだ、というのが大まかな筋。
 その大異変とは「海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Events)」と呼ばれる出来事で、特に恐竜時代の白亜紀に頻繁に起こったのだという。当時、大気の二酸化炭素は火山活動などによって現在より数倍多く、地球全体が温室のような状態だった。当然、以前に紹介した海洋のベルトコンベアは止まっていて、海水の循環がなく、新鮮な酸素が海底に供給されることがないため、生物の死骸が降り積もって分解することで酸素が消費される深海底では、ついには無酸素状態になってしまったという。無酸素の深海には嫌気性のバクテリアが増えて、それが作り出す硫化水素によって海全体が汚染され、多くの生物が死滅した。それらの死骸が海底に膨大に堆積して、やがて形成されたのが石油を含む地層なのだという。従ってこの石油には、大異変の根本的な原因となった当時の地球の多過ぎた二酸化炭素が、生物の遺骸として封じ込められているわけだが、それを今人類は再び大気中にせっせと解き放って、急速に環境異変への道を突き進んでいると番組は警告する。
 どうも話が大き過ぎて、粗雑な頭には確と理解し難いし、以前に触れた海洋コンベアの停止による氷期の再来理論との関係もよく分らないが、ともあれ、石油に頼った今の文明のあり方が地球のバランスを崩そうとしていることだけは間違いなさそう。
 核に手を染める以前に、人類はすでに化石燃料というパンドラの箱を開けていた、ということだろうか。