タカネビランジ

 今回の山行で出会った花でもっとも目覚ましかったのはこれ北岳に咲いていたタカネビランジ。幾つもハシゴを攀じ登ってようやくたどり着いた八本歯のコルで、この花を初めて見た時は、ほんとうに嬉しかった。これからは、この花を見る度に、あの2900mのステージでの出会いをきっと思い出すだろうな。
 ナデシコ科シレネ属の花で、学名 Silene keiskei var. akaisialpina。南アルプス固有の植物なので、変種名に南アすなわち赤石山脈の名が使われている。シレネにはたくさんの園芸種があるけれども、岩勝ちな風景のなかに咲くこの花には、それらに劣らない上品さがある。ふつう濃ピンクのものが多いらしいけれど、薄くピンクになった花も混じるこの白花種の優美さは格別。