タイマツバナ




 正式な学名はモナルダMonarda、英名ベルガモット、ビーバーム、日本名のタイマツバナは本来赤花をいい、ピンクのものは矢車ハッカと呼ぶという説もある。花と葉っぱは芳香があるから、そのまま茶にしたり、乾燥させてポプリにしたりと、ハーブとして使えるらしいが、葉はうどんこ病にやられて白く粉をふいたりするし、ハーブらしい瑞々しさには欠けるので、花を楽しむ宿根草としてしか考えたことがない。
 初夏、1mほどの茎の先に花火みたいな王冠みたいな華やかな花を着ける。たくさん揃って咲いた時はみごとな有り様なのだが、この花、どうも捉えどころがなくて、意志的に種類を特定しながら栽培するというよりも、勝手に生えて咲いてるのを楽しむという扱いなのだ。申し訳ないが、花のきれいな雑草程度の扱い。
 なぜ捉えどころがないかというと、まず株の有り様がイマイチはっきりしない。冬に地上部が完全に枯れてしまうのだが、もちろん地下部は生きている。その地下部は細い地下茎が散漫と浅く広がっているもので、境界がはっきりしない。散漫と広がった地下茎の上には当然雑草も混じって生えるが、薄くて浅い地下茎なので雑草だけを取り除くことは困難を極める。下手をすれば雑草といっしょにハンドフォークに引っかけて取り除けてしまいそうになる存在感の薄い株だ。そしてその地下部から春、新芽が吹いて、ちょうど竹が地下茎から生えるように、広がった株のそこここから茎が伸びるのだが、これがまた生えてみないと、どこに花茎が立つかが予想できない。すなわち花壇経営上、大変迷惑な存在形態をとる宿根草なのだ。
 そのうえ花も捉えどころがない。ご覧のように多様なカラーバリエーションを備えた花なのだが、これが同一種の変異なのか、それとも種類の違いなのかがよく分らない。分かろうとも思わないのは、色以外の違いがあまり感じられないし、曖昧な地下株の存在形態のせいで、こちらの種への対し方も曖昧にならざるを得ないせいだ、というのは強弁が過ぎるか。
 ともかく、かくの如き茫洋たる宿根草なので、今年栽培4年目、いよいよ株が散漫・弱体化して花も半減したのを機に、この冬はある程度株の清算に着手せざるを得ないだろう。今後、こんなに色数が揃うことはないかもしれないな。